合意形成のためには、問題点を「深く掘り下げる」のは正解か?
『話し合いは出だしが肝心。最初に異論反論を洗い出すことで会議が紛糾しなくなる!』)ら、次は掘り下げ質問に入りましょう。
掘り下げ質問では、「ただいま出された反対意見の中で、どの点から先に議論したいですか」「10の懸念点が出されましたが、最も深刻な問題はどれですか」「○○さんは、3点の指摘をしてくださいましたが、どの点が一番気になりますか」……というように、最もみなの関心が高く、深刻な問題を掘り下げていきます。
掘り下げ質問には、答え方の選択肢を質問で提示して、答えの幅が限定されていく限定質問(クローズドクエスチョン)」を用います。限定質問により、深刻度合に応じた掘り下げをしていくのです。
そして、大体で良いのだが、最も深刻な問題、次に深刻な問題と言うように、深刻度合の優先順位を付けていきます。「大体でよい」という点がポイントです。
このように申し上げると、「どの問題が最も深刻か、意見がわかれてまとまらない」「きれいに深刻度合の優先順位などつけられない」……という意味の心配をする人がいるかもしれません。しかし、その心配は杞憂です。
なぜならば、厳密な優先順位付けをする必要がないからです。「大体、この2つが深刻な問題ですね」「順位についてはともかく、この2つが最も気になる懸念ですね」という程度の掘り下げをして、最も深刻な問題「群」を区別するだけでもよいのです。
読者の中には、厳密に深刻度合に応じた優先順位付けをしないことに違和感を覚える人がいるかもしれません。確かに、もし、システムのエラーを発見する、製品の瑕疵を見出す、組み立て工程の間違いを発見する……というような類のトピックスであれば、全ての問題点を洗い上げ、厳密に、深刻度合いに応じた掘り下げをしていく必要があるでしょう。
これらのシステムや製品の性能に関するトピックスは、合意形成の会議方式を用いるのではなく、担当者による問題点の洗い出しや、専門家による深刻度合の優先順位付の掘り下げをしていくことに適してます。
しかし、会議で合意形成していく議題は、システムエラーや製品の瑕疵の発見というようなテーマではありません。来年度の業務方針や、課題解決の方法など、ビジネスパーソンの行動のあり方に関するトピックスについては、仮に全ての問題を洗い上げ、厳密に優先順位の掘り下げをしなくても、議論に参加するメンバーが合意できさえすれば、主な問題が洗い出されて、大体の優先順位の掘り下げがされれば十分なのです。
参加者の妥協を生み出す方法なのかと問われれば、そのとおりです。しかし、参加者が、それでやっていこう、少なくとも反対しないという意識を生み出せれば合意形成ができるのです。
言い換えれば、ビジネスパーソンの行動のあり方に関するトピックスに、システムや製品の性能を確認する方式を取り入れてはいけません。ビジネスにおける合意形成がうまく進まない理由は、その点にもあるように思えてなりません。
会議や対話で、洗い上げ質問、掘り下げ質問、示唆質問、まとめの質問の4つの質問を繰り出していくと、一定時間内に合意形成できる確度が格段に高まる。洗い上げ質問で異論や懸念を洗い上げた(※システムエラーとビジネス行動を掘り下げる方法は別だ!
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