海底遺跡を発見した男・新嵩喜八郎の尖閣諸島上陸記<1>
「日本の領土を守っているのに、違法行為とされてしまう」
「実は、石原慎太郎先生が運輸大臣だったころ尖閣へ行き、与那国からあそこまで灯台を運んだのは私たちなんです。そこにある“イソバ”という船で十数時間かけて行きましたよ」
氏が運輸大臣だったころというともう30年以上前、まだ裕次郎氏が存命中だったころだ。
「結局、尖閣は日本の西の玄関口でありながらかつては灯台一つなかったわけですよ。それはまずいでしょうと。沖縄の民族派の人々は北方領土の話ばかりしますが、目の前に尖閣があるでしょう。まず自分の頭の上を飛んでいるハエを追いましょうということですよ」
新嵩の携帯着メロは、そんな愛国心の表れなのだ。
そういえば、灯台ということは、電源がなければならない。夜に光が灯らない灯台など、でくの坊そのものではないか。そこはどうしているのか。
「空気電池といいましてね、ある薬品が入った箱を開封すると空気と触れて発電できる仕組みがあるのですよ。これを一つは点滅用、一つは感知用と二個用意しました。かつては灯台管理とか電球のレンズ磨きのために一年に三回くらい現地に行っていましたね。日本領土を守っているのに、なぜかこれが違法行為とされていたんですよね。漁船登録している船で人を運んでいるから交通船だ、これは漁船法による航行区域外航行違反だ、とそういう理屈らしいですけどね」
今でも尖閣はカツオやカジキがよくとれる豊かな漁場だという。
かつてものの本に、「現在の尖閣はヤギが増えすぎて環境破壊が起こっている」という記述があった。その点を新嵩に問うと、彼は慚愧の念を押し殺すようにして語った。
「実はあのヤギも尖閣へ私たちが持って行ったものでした。緊急時の食糧にするために二頭のつがいを連れて行ったのです。当時の私たちは勉強不足で、まさかあそこまでヤギが増えて生態系を壊してしまうような事態を引き起こすとは夢にも思っていませんでした。本当は少し間引きをしないといけないのですが」
ひどいときは五百頭以上ヤギがいて、風下に立つとヤギの臭いがひどかったという。 そしてヤギのせいでおきた自然破壊の中で一番大きかったのが「植物の減少」だ。
「ヤギはあらゆる植物を食べてしまうのですね。そのせいで地肌がむき出しになり、ガケ崩れが多くなるということです。そういう悪循環を生み出してしまいました」
最初に連れ行ったのが二頭だけだったとするなら、普通に考えてその子供のヤギが何頭かできるだろうが、それ以上交配を繰り返すと一種の近親相姦が続くということで、それほどヤギが増えてしまうのが想定外だったというのはわからなくもない。
「何年前でしたか、エビ運搬船が嵐で尖閣に座礁したことがありました。その際の乗組員が二十数名いて、私たちが避難小屋に残していた缶詰などの食糧で生き延びたということはありました。シュウダという、興奮すると匂いを出すヘビがいるのですが、そのヘビとセンカクモグラというモグラの一種も確かにいなくなってしまいました」
新嵩の尖閣物語はさらに続いた。
【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。