多様化する図書館運営。ビジネス活用の成功例も
2017年、図書館で歴史的価値のある図書を破棄する事件が相次いだ。元京都大学教授、桑原武夫氏の遺族から寄贈された蔵書約1万冊を、京都市が無断で廃棄。石川県の穴水町でも、寄贈された貴重な資料の多くを廃棄処分してしまった。
図書館問題研究会委員長、中沢孝之氏に聞いた。
「図書館側でも気をつけて管理しているので、こうしたことはめったにありません。ただ、本を寄贈したいという申し出は高名な作家や学者以外でも毎日のようにあります。古い百科事典などが多く、受け入れられないものも多いですが、寄贈された大量の本を整理する人員が足りていないという現状がある。廃棄事件は、大量の寄贈といったイレギュラーな業務を後回しにしているうちに起きたのだと思います」
というのも、’03年に発足した図書館の管理を民間委託とすることができる「指定管理者制度」や自治体の定数削減などにより専従職員が減り、人材育成や長期的な運営計画に懸念が出ているのだ。
寄贈された本は選別し、ラベルを張り、登録するのに1冊あたり200円程度のコストがかかるうえ、書庫にも限りがある。
新しい図書館でも図書館はだいたい10年も経つと満杯になるため、除籍業務は毎日のようにバックヤードで行われている。
「図書館の業務の中でも除籍は一番熟練が必要な業務です。自治体によって基準は違いますが、資料的価値や貸出実績などから数日かけて判断されます。もちろんダブルチェックをした上で館長の許可を得なければ廃棄には至りませんが、何を捨てて、何を残すべきかの勘所が身につくまでかなりの年数がかかる。昔なら職員を年数をかけて育成できましたが、今はほとんどが非正規なので難しい」
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