現段階で事件が顕在化した例は少ないが、ネット上では「ノアコイン」や、「パワーコイン」など、数多の被害の声が出ている。中国はICOの市場閉鎖をしているが、緩和がいつ弱まるかも不透明で、中国政府が暗号通貨の発行に踏み切る可能性も充分に考えられる。眠っている“チャイナマネー”の動向次第では、更なる市場拡大の可能性が高いといえるだろう。
また、三上氏は仮想通貨の登場により犯罪の国際化も簡易になると指摘する。
「各国でそれぞれ動いていたマフィア達の活動は暗号通貨により、活動がグローバルなものになる。例えば、中国のマフィアが日本でお金を集めることも全然簡単にできるんです。今問題になっているパラダイス文書のように、タックス・ヘイブンにお金を移すより、さっさと暗号通貨にしてしまうほうが、ロンダリング的にも良いでしょうしね」。
そんななかでも、新興の仮想通貨で安全なものはあるのか?
「今のところは、ICOは詐欺だと考えて下さい。仮想通貨に深い理解がある人だけ買うべき。そうでない人は、手を出しちゃダメです。どうしても手を出すなら、なくなっても良いお金にして下さい」
国民生活センターへの、仮想通貨トラブル相談数は年々増加している。今年も新たな被害者が増えないことを祈るばかりだ。
《仮想通貨に関する相談件数》
2016年 634件
2015年 440件
2014年 194件
出典:国民生活センター
《仮想通貨詐欺を見分けるポイント》
●「政府公認」
「金融庁が推奨している」と謳って勧誘するケース。金融庁が特定の通貨取引を推奨することはない
●「値上がり保証」
仕組みは株やFXと同じ。無責任な説明は証券取引法違反に値する
●「代理店」やセミナーでの購入を勧めてくる
ビットコインは直接購入が可能なため、代理店などは不要。セミナーも、なくても十分事足りる
●「独占販売」
仮想通貨は全世界同時に発売しており、「まだ市場に出ていない」、「ここただけで販売」というのはありえない
【三上洋氏】
ITジャーナリスト。セキュリティ、ネット事件、スマートフォン、ネット動画、携帯料金・クレジットカードポイントなど幅広いジャンルをカバーする。
<取材・文/栗田シメイ>