原発20km圏内に復活、“文化的復興”を担う「埴谷島尾記念文学資料館」の「島尾敏雄展」に行ってきた

 また、2007年に亡くなった島尾敏雄の妻・島尾ミホさんには、終戦前、魚雷艇の特攻隊長だった青年の島尾敏雄に後追いを覚悟して会いにいくまでを描いた短編「その夜」(『海辺の生と死』所収)があるが、これが実に名作ながら、あまりにも「理想化」している。ある意味、後の『死の棘』を予感させる。

地元出身作家たちの資料館復活が「復興」の一助に

 埴谷雄高の父と島尾敏雄の両親が偶然小高出身だったことからできたこの「埴谷島尾記念文学資料館」のある浮舟文化会館は、震災時の2日間、一時的な避難場所となっていたそうだ。津波が国道6号を越え、常磐線の線路際まできて甚大な被害をもたらした。しかし、いま小高では電車の運転が再開され、2020年3月には富岡-浪江間も開通の予定らしい。  架空凝視と現実密着。そんなフレーズも埴谷雄高にあったが、ここの文学資料館は、いずれ埴谷好き・島尾好きの聖地になるかもしれない。 <文/岡村朝雄(アンドロメダ忌<埴谷雄高の命日>自由会員)>
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