NYで大人気の手巻き寿司店が見せた、海苔への並々ならぬこだわりとは?

橋本愛喜
店内の様子

日本人以外が大絶賛する手巻き寿司店「KAZUNORI」店内の様子

 世界の最先端が集まるニューヨークで、ある日本食を引っ提げたレストランが、オープンから大盛況を維持し続けている。

 その日本食とは、“手巻き寿司”だ。

 これまでアメリカ西海岸に3店舗を構え、多くの外国人から絶大な支持を獲得してきた手巻き寿司専門店の「KAZUNORI」が、今春、ニューヨークに上陸した。

 いわずもがな、舌の肥えたニューヨーカーに受け入れられることは、新規レストランにとって並大抵のことではない。

 毎朝横切る通りの一角で、改装工事中の店内に一枚板のカウンターが取り付けられるのを見て、筆者も「また“SUSHI屋”ができるのか」くらいにしか思っていなかったのだが、オープンから10か月が経った現在でも続く長い行列に、恥ずかしくもようやくこの店が「ただのSUSHI屋じゃない」と気付いた次第だ。

 念のため意見を合わせておきたいのだが、「カリフォルニアロール」からも分かる通り、アメリカの「すし」は断固として「寿司」ではない。「SUSHI」である。

 そしてその「SUSHI」といえば、マグロかサーモンの“にぎり”か、アボカドに支配されたネタと海苔がシャリの内側に巻かれて一口サイズにカットされた、見た目も味も響きも、なんや忙しい“ロール(roll)”のことである。

 そんな中、この店が提供する「黒くて長い日本の手巻き寿司」は、外国人にとってはある意味“インスタ映え”する逸品らしく、普段「レストランの料理を写メるなんてくだらない」とする外国人が、珍しくその“1本”にスマホを向けているようで、現地の大手口コミサイトには、彼らがアップした画像が満載。

 が、手巻き寿司だけに、当然そのほとんどが“太一文字”で、画像だけでは本当の魅力がよく分からず、ならばと今回、筆者も足を運ぶことにした。

 店に到着したのは、ランチタイムもとうに終わった午後2時ごろ。それでも店内には長い列ができていたのだが、意外にも客の回転はかなり早い。その訳は「シンプルなメニュー」と、「注文方法」にある。

 列待ちの間、壁に備え付けられてあるオーダー表を取り、注文したいメニューにチェックを入れ、通された席前の板場スタッフに渡す。

 メニューには、「ロブスター」や「イタヤ貝(のスパイシーマヨネーズ和え)」など、アメリカナイズされかかりのネタもあったが、基本的にはサーモンやツナマヨといった、シンプルで定番なネタが10種類用意されていた。バラでもオーダーできるが、多くの客が3本から6本までの「手巻き寿司セット」を選んでいるようだった。

 サイドメニューは「味付けサーモンの刺身」のみで、あとはドリンクが数種類。ガリやワサビは予め小皿で出してくれる。

 こうしてシンプルを徹底したことで、他のレストランよりも「おひとり様」が多く、客1組当たりの滞在時間も大体20分前後。まさに、日本の江戸時代にあった「ファストフードとしての寿司」を体感できる作りとなっていた。

 板場スタッフの手には、以前紹介したように、ニューヨークの法律に則って「ゴム手袋」が装着されおり、彼らによって1つひとつ巻かれた寿司は、出来上がり次第、寿司下駄の代わりに敷かれた紙にポンと置かれる

紙に置かれた手巻き寿司

紙の上にポンと置かれ、早めに食べるよう促される。海苔はパリパリだ

「出されたらすぐに食べてください」というアドバイスに従い、巻かれたての寿司を口へ運ぶと、日本の手巻き寿司以上にパリパリなのに驚く。見ると、その食感を強調させるためか、巻き付けた海苔に、シャリがつかない「遊びの部分」を多く作っているのが分かる。

「パリパリの海苔」に馴染みのない外国人にとっては、その触感がかなり面白いようで、クチコミサイトには、「温かいご飯にクリスピー(パリパリ)な海苔、冷たい魚のコンビネーションが最高」という言葉が並んでいる。

 同行してくれたウクライナ人の友人も、「こんな触感初めてだ」と咀嚼しながら眉を上げるが、手巻き寿司には人一倍うるさい筆者にとっては、正直なところ、少し口の中がやかましく感じた。

 巻き方も日本のそれよりも緩めで、シャリはほろほろ。歯ごたえの違う海苔とシャリ、温かさの違うシャリとネタのそれぞれのコントラストを強調しているという店側の意思がひしひしと伝わってきた。

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店が海苔を味わってもらうために仕掛けた、もう一つのさりげない工夫とは?

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