伊藤詩織さん事件、もう一つの“ブラックボックス”とは?

食い違う両者の主張で唯一、ブラックボックスになっていない点

 そこで、伊藤氏の著書「Black Box」、山口氏が「月刊Hanada」に掲載した手記「私を訴えた伊藤詩織さんへ」を読み比べてみた。  その中では、事件に対する両者の言い分は真っ向から対立している。
両者の主張

両者の主張

《両者の主張》 ●性行為に関する合意 伊藤氏:なかった 山口氏:あった ●デートレイプドラッグ 伊藤氏:入れられた。ドラッグを入れられたのと同じ症状が出た 山口氏:席の構造や当時の状況から、入れることは不可能で、店主も証言済み。警察に提出したパソコンからもドラッグ購入歴は出ず ●ホテルに入った経緯 伊藤氏:帰りたいと言ったが、酩酊しているところを担ぎ込まれた 山口氏:防犯カメラの映像では、自分で歩いて部屋までついてきたことが確認 ●ノートパソコンで盗撮 伊藤氏:していた 山口氏:そのような機能はなく、警察に提出したパソコンから盗撮映像は出ず ●部屋の中での意識 伊藤氏:なかった 山口氏:終始あった  その他、仔細な食い違いは多いものの、ただひとつ両者の主張で一致し、“ブラックボックス”になっていない部分が伊藤氏が山口氏に就職相談をし、アメリカの就労ビザについて相談しあった点だ。  たとえば、ジャーナリストビザ(「Iビザ」)取得に必要な条件について、駐日アメリカ大使館では以下のように解説している(抜粋)。 ・申請者は外国に本社がある報道機関で、ビザ資格に適した活動に従事していること ・また、その費用の出所および配給が米国外であること ・専門的な報道組織が発行する身分証と、有効な雇用契約書  フリーランスの場合も上記とほぼ同様の条件が適用されるが、フリーランスの場合は一層厳しく、中には10年かけて準備してトライしてもダメな例もある。しかも一度却下されると取得のハードルが上がる。だが、一度取得してしまえば5年ごとに日本で更新することで、ずっとアメリカに居続けることができる。そのビザが生きている間は所属先との契約が切れても、その事実がアメリカにばれることはないため、問われることはない。  だからこそ、ビザ取得希望者は冒頭のようにコネをフル活用して頼み込むか、必死になってポジションを得ようとするのである。  さらにトランプ政権となり、ビザ取得は難しさを増した。ロイターでは、2017年1~8月に申請された米就労ビザのうち、8万5000件が突き返され、「追加書類要求(RFE)」が出されていることが米市民権・移民業務局のデータで明らかになったと報じている。
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事件に横たわる”両者の悲しい誤解”
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