欧州南天天文台が作成した「ロス128 b」の想像図。画像の上に光っている恒星「ロス128」を回る惑星である Image Credit: ESO/M. Kornmesser
いまから1年前の2016年8月。欧州南天天文台などが、私たちの住む太陽系からわずか4.2光年という距離の場所に、地球に似た環境をもつかもしれない惑星「プロキシマb」を発見したと発表し、大きな話題になった。
その後現在まで、生命がいることは確認されておらず、また最新の研究では大気が存在できない可能性が指摘されるなどし、少なくとも「第二の地球」と呼べる存在とは考えられていない。
しかし2017年11月15日、その欧州南天天文台がふたたび新たな発見をなしとげた。太陽系から約11光年彼方にある「ロス128」と呼ばれる恒星を回る、「ロス128 b」(Ross 128 b)という惑星を発見。観測の結果、地球に近い温暖な環境にあり、なおかつ生命が存在しやすい条件も揃っていることがわかった。
はたしてこのロス128 bとはどんな惑星なのか。そして「第二の地球」と呼べるのだろうか。
ロス128 bを発見したのは、南米チリにある、欧州南天天文台のラ・シヤ観測所である。ここにある大型望遠鏡には、太陽系の外にある惑星(系外惑星)を観測するための「HARPS」という装置が設置されており、これまでに数多くの系外惑星を発見している。今回のロス128 bも、このHARPSによる観測で見つかった。
ロス128 bを発見した欧州南天天文台の望遠鏡。太陽系の外にある惑星(系外惑星)を観測するための「HARPS」という装置が設置されている Image Credit: ESO/S. Brunier
ロス128 bの大きさは地球の約1.4倍ほどと、ほぼ同じくらい。温度は20°Cからマイナス60°Cほどと温暖で、地球に似た、生命が生存しやすい環境にあると考えられている。
地球が太陽のまわりを回っているように、ロス128 bも「ロス128」という恒星のまわりを回っている。ただ、その距離は約750万kmと、地球と太陽の距離(約1億5000万km)のわずか5%ほどで、公転周期(その惑星の1年)も約9.9日ほどしかない。
にもかかわらず、どうして地球のように温暖になっているのか。その理由は、ロス128が太陽よりも小さく、質量も軽く、放出するエネルギーも太陽よりはるかに少ないためである。つまりその分、惑星が恒星のすぐ近くに位置していても大きく熱せられることはなく、ロス128 bがロス128から受けているエネルギーは、地球の約1.38倍ほどとほとんど同じで、むしろ生命が住みやすい環境になっていると考えられている。
また、ロス128のような「赤色矮星」と呼ばれる種類の恒星は、活発に活動していることが多く、表面から大量の紫外線とX線が放出される場合がある。これらが惑星にぶつかると、大気が剥ぎ取られるなどし、生命が生活できない環境になってしまう。
しかし、ロス128は赤色矮星の中でも比較的穏やかな星だと考えられており、その点でもロス128 bに生命がいる可能性に希望が持てる。ちなみにプロキシマbが回るプロキシマ・ケンタウリは活発に活動していることがわかっており、最近ではプロキシマbには大気がないかもしれないという研究結果も発表されている。
もっとも、実際にロス128 bに生命がいることが確認されたわけでもなければ、生命が存在するのに必要とされる液体の水があることも、まだ確認されたわけではない。