11光年彼方に地球サイズの系外惑星を発見! “第二の地球”の可能性も?

探査は可能? 7万9000年後には太陽系に最も近づく!?

 ロス128は太陽系から約11光年離れており、地球に似ていると考えられる惑星としては、4.2光年先のプロキシマbに次いで、2番目に太陽系に近いところで見つかった。  もちろん近いとは言っても、それは宇宙のスケールを考えたときの話であり、11光年をkmに直すと104兆kmという途方もない距離になる。現在、人類が造ることができる最速の探査機を打ち上げたとしても、到着までには20万年ほどかかる。今後、よほど画期的な新しい探査機でも開発されない限り、私たちが生きている間に、こうした系外惑星の姿を間近で見ることはできないだろう。  ただ、ロス128は太陽系に向かって徐々に近づいてきており、いまから7万9000年後までには、ロス128 bはプロキシマbよりも太陽系に近い惑星になると予想されている。下手に探査機を打ち上げるより、子孫に託して近づくのを待つほうが得策かもしれない。  ちなみに4.2光年のプロキシマbでも、普通に探査機を送り込もうとすると約7万年かかる計算になる。ただ現在、ロシアの大富豪ユーリー・ミーリネル氏と、物理学者のスティーブン・ホーキング氏らが立ち上げた財団が、「ブレイクスルー・スターショット」と名づけられた探査機の研究を進めている。  これは切手ほどの大きさの探査機にカメラや通信機などを埋め込み、強力なレーザーを使って光速の約20%の速さにまで加速させるというもので、地球出発からプロキシマbのそばを通過するまで20年と見積もられている。画像のデータが地球に届くまでさらに4年かかる(通信もまた光の速度でしか届かないため)ものの、四半世紀かければ、プロキシマbを探査できることになる。  ただ、技術的な課題がまだ多く、実現までにはこれから20年ほどの年月が必要とされ、明日にでも打ち上げられるというものではない、まだまだ夢物語である。

ロシアの大富豪ユーリー・ミーリネル氏や、物理学者のスティーブン・ホーキング氏らが検討している恒星間探査機「ブレイクスルー・スターショット」の想像図。切手サイズの超小型探査機をレーザーで加速させ、プロキシマbのそばを通過させようというもの Image Credit: Breakthrough Initiatives

ロス128 bからの謎の信号?

 恒星からの距離がほどよい、そしてその恒星の活動も穏やかといったこと以外にも、実はロス128 bにはもうひとつ、生命がいる可能性を示唆する出来事があった。  2017年5月12日、プエルトリコにあるアレシボ天文台の巨大な電波望遠鏡が、ロス128の方角から奇妙な信号を捉えた。この信号は広い周波数で周期的な波形をもっており、人工的なものと考えられたのである。もしかしたらロス128を回る惑星に知的生命体がいて、地球などへ向けてメッセージを送っているのではないかと話題にもなった。  ただその後、他の電波望遠鏡ではこの電波が捉えられなかったことや、アレシボ天文台による追加の観測でも捉えられなかったことなどから、この信号は地球を回る人工衛星から出た電波を誤検知したものである可能性が高いとされ、知的生命体からのメッセージ説は除外されている。  しかし、だからといってロス128 bに生命がいないと考えるのは時期尚早であろう。  今回の発見を成し遂げた欧州南天天文台は現在、チリに「超大型望遠鏡」(Extremely Large Telescope)と名づけた、新しい望遠鏡の建設を進めている。早ければ2024年にも完成する予定で、この望遠鏡を使えば、さらに多くの系外惑星の発見が期待できるほか、ロス128 bについてもより詳しく観測でき、気候や、大気の組成などもわかると期待されている。たとえば酸素や、生物の活動で排出されるメタンなどが観測できれば、生命居住な星である可能性がぐっと近づくことになる。  さらに米国航空宇宙局(NASA)なども、新しい系外惑星を発見したり、そうして見つかった系外惑星を詳しく探査したりできる衛星の打ち上げを計画している。  ロス128 bが第二の地球と呼べるかどうかはまだわからない。しかし私たち地球人の観測技術は、その答えを出すのに十分なところにまで近づきつつある。今後の観測の結果、もしロス128 bが第二の地球でなくとも、がっかりする必要はない。そのころにはきっと、さらに多くの第二の地球の候補が見つかっているに違いない。  そしてその惑星を探査したり、あるいは実際に赴ける日も、いつか訪れることだろう。

ロス128の実際の写真。周囲にある明るい星……ではなく、写真の真ん中に小さく見える、褐色の星がロス128である Image Credit: Digitized Sky Survey 2. Acknowledgement: Davide De Martin

<文/鳥嶋真也> とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。 Webサイト: http://kosmograd.info/ Twitter: @Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info) 【参考】 ・Closest Temperate World Orbiting Quiet Star Discovered | ESO(https://www.eso.org/public/news/eso1736/) ・The Weird! Signal – Planetary Habitability Laboratory @ UPR Arecibo(http://phl.upr.edu/press-releases/theweirdsignal) ・Planet Found in Habitable Zone Around Nearest Star | ESO(http://www.eso.org/public/news/eso1629/?lang) ・Exoplanet Exploration: Planets Beyond our Solar System: An Earth-like atmosphere may not survive Proxima b’s orbit(https://exoplanets.nasa.gov/news/1445/an-earth-like-atmosphere-may-not-survive-proxima-bs-orbit/
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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