サンフアンで問題が発生したことが本部に伝わった後、すぐに問題は解決したと報告があったとしても、古い潜水艦である。その後も随時交信を継続して行くべきであった。しかし、現実には海軍の規定に従い48時間は本部からは如何なる対応もしていなかったのである。
海軍本部で、マクリ大統領がマルセロ・スルル提督に「潜水艦からコンタクトがない状態だった時に、どうして即座にその情報を提供しなかったのか?」と尋ねたところ、提督は「『潜水艦の艦長が問題なく航海している。マル・デル・プラタに4日後に到着すると思う』と回答して来たので、(海軍の)規定に従って再度交信するのを48時間後とした」と大統領に答えたのだという。(参照:「
Infobae」)
サンフアンは古く、しかも長期間困難を極めて修理改善した潜水艦である。一度、問題が発生した時点から、海軍本部はもっと慎重にそして頻繁にサンフアンと交信を続けておくべきであった。それを、適時に報告をしないばかりか、海軍の規定で48時間次の交信を待ったというのは怠慢そのものであろう。
艦内の酸素は7日、よく持って10日とされている。そのような事態で、48時間海軍本部は如何なる手も打っていなかったのである。海軍本部の怠慢で貴重な2日間が失われていたのである。
この潜水艦の建造を決めたのはマクリ大統領ではない。しかも、潜水艦に問題があるということまで大統領が逐一把握して行くのは困難である。しかし、マクリ大統領は、44人の乗組員生存の可能性が非常に薄くなって絶望しかけている家族と敢えて面談した。
その面談で、乗員の家族の一人が「どうして予算を他のことに充てて、本当に重要なことにそれを充てなかったのか?これは我々家族の生命にかかわる問題なのだ。古過ぎるものを維持しているのは自殺と同じだ」と大統領に尋ねて憤りをあらわにした。
大統領はそれに対して、「航海するのに必要な条件は全て満たしていた。潜水艦は古い。しかし、それが良い状態で維持されているのであれば、年代は問題ない」と答えたという。いま、彼にはこう回答するしかできなかったのである。(参照:「
Hispan TV」)
<文/白石和幸 photo by
Juan Kulichevsky via flickr(CC BY-SA 2.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。