受付で揉めないために、最低限、誰が見ても禿げている必要がありそうだ
北条かやの「炎上したくないのは、やまやまですが。」【その3】
北海道函館市の「ホテルテトラ」が、髪の毛の少ない人の利用料金を割引するサービスを開始し、話題になっている。
その名も「ハゲ割」。チェックアウトの際に受付で「自己申告」すると、1泊あたり300~500円が値引きされるという。薄毛かどうかは受付の職員が「目視」で判断(!)。ユニークな企画とあって全国紙にも取り上げられた。
さて、薄毛に悩むのは、どちらかと言えば男性に多いが、この「ハゲ割」ではまさにあなたの「男らしさ」が試されているのである。
ホテルテトラの「ハゲ割」が始まったきっかけは、部屋の清掃スタッフが「排水溝の髪の処理に苦労している」という事実だった。スタッフの苦情を耳に入れた社長が早速、「ハゲ割」を導入し、全国20箇所にある同ホテルの系列に広がったという。
私がとっても面白いと感じたのは、「ハゲは自己申告に限る」という決まりだ。割引を受けられるかどうかは、チェックアウト時のカミングアウトによるしかない。
顧客は「自分は頭髪が非常に薄いんです」と、いつもはかぶっているかもしれない帽子を取ったり、カツラをいさぎよく取り払ったり、なんらかの「恥ずかしい行為」をしなければならない。しかも他人の前で、わずかワンコインの割引を受けるため『だけ』にである。
異論があるかもしれないので補足すると、「ハゲ隠し」のために帽子をかぶっている人は基本的に、「恥ずかしいから」「帽子を被った方が見栄えが良いから」帽子が手放せないのだと思う。その帽子を取るのだから恥ずかしいはず、と仮定した次第である。「堂々とハゲつつファッションの観点から帽子をかぶっている人」は、その限りでない。
さて、社会学の名著に『
ハゲを生きる――外見と男らしさの社会学』(須長史生、1999)がある。同著ではハゲになやむ男性たちにインタビューしているが、彼らは日常的に「おい、ハゲ」などのからかいを受け、髪の毛をネタにされているそうだ。
読者の中にも思い当たる人がいるのではないか……と思ったらまさに自分もだった。ネットではよく「ハゲ」と悪口を書かれる私である。正直イラっとする。人の髪の毛くらい、放っておいてくれよな。