「家族レベルでも分裂」。バルセロナ在住日本人が見たカタルーニャ独立騒動

DasWortgewand /pixabay(CC0 Public Domain)

 プチデモン・カタルーニャ前州首相がベルギーで逮捕、保釈されるなど、カタルーニャ独立騒動はとうぶん収まりそうにない。  前回に引き続き、筆者の友人でカタルーニャ在住の日本人・佐藤美佐江(仮名・敬称略)の独白を続けていこう。 「私の周りを見ても半分以上が独立反対だし、独立したらポルトガルより豊かになれるとか威勢のいいことを言っている人もいるけど、私にはそうは思えないな。でも、独立賛成派のほうが響きがいいから、若者が取り込まれている感じがするよね」  実際に自治権停止、そしてカタルーニャ州首相が解任そして反乱罪で訴追、その当人が国外逃亡と事態が進んでいる。下手をしたら“名誉ある撤退”で終わった「スペイン版加藤紘一の乱」である。 「あったあった、日本にもそんなのあったよね。次の選挙が12月(註:12月21日の州議会選挙のこと)なのね。そのときに独立志向が強い自治政府になるのか、逆のほうにいくのか、そこで大きく変わる気はする」  ちなみに、この会話は美佐江の職場で食事休憩の間に行った。 「やっぱり困るのはまたゼネストが起きそうなことで、今週もバスが止まる、メトロの本数が減るという話で、今日は無事職場に来れたけど明日はどうなることやら……」  いま美佐江がいちばん憂いているのが個人レベル、家族単位での分裂だという。 「うちの家族の中にはそんなに過激な人はいないけど、親戚の若い子で独立派に取り込まれちゃったのはいるよ。一種の祭りというか、独立ってやっぱり熱いから感化されちゃうのよね。“数か月前なら投票に行かなかったけど、オレは完全に独立派になったぞ”みたいな感じでフェイスブックにも最近すごい書き込みしてるよ」  そして、独立か反独立かとは別の対立軸が生まれつつあるという。 「さっき(前回)州警察の話をしたけど、こういう騒ぎになったら仕事量も時間も増えるじゃない。だけど、残業手当みたいなのが全然出ないって。そもそも残業なんか滅多にないはずの国で一日12時間・13時間労働になって手当ても出ないわ、家族も置き去りにされるわで、そこの不満が募っているみたいよ」  さらに“州警察の憂鬱”は続く。 「親しい知人の中に、息子が警察の特殊部隊に属している人がいて、何かあったら真っ先に投入されるわけよね。親御さんは気が気じゃないって。被害者になる可能性もあるし、加害者になる可能性もあるわけじゃない。でも攻撃されたら反撃するしかないからね」
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「子供たちに独立思想を植えつけられたら……」
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