タイで星を掴んだ男・下地奨が語る「金持ち選手、貧乏選手」(1)

稼げるサッカー選手になる術は指導者は教えてくれない

 こうして銀座のボーイだった下地は、自分なりにお金の勉強を始めた。  「真っ先に読んだのは、あまりにもベタですけど“金持ち父さん、貧乏父さん”でしたね。当時の僕はブラジルから戻って来たんですけど、本場のブラジルでやっていたんだし、まあ日本でクラブくらいあるだろうと思っていたんですよ。五チームくらい話して、全滅でしたからね。“あ、オレ需要ないんだ”と。預金残高が40何円かで、コンビニでおにぎりも買えないんですよ。しょうがないからヤフオクとかで持ち物売って、ぎりぎり食いつなぎながら、どうせ仕事しないといけないならただのバイトじゃなくて銀座でのほうが面白いかなと。時給は1700円でしたかね。そのときに“金持ち父さん”を読んで、何を書いていたか覚えてないけど衝撃だけはすごかったのを覚えてますよ。」  筆者が「金持ち父さん」を初めて読んだのは、忘れもしない2000年12月末だった。  当時米国の大学で学んでいた筆者は、一か月の冬休みに際し、帰国費用とバスによる全米一周旅行の費用を比べてみるとむしろ全米一周のほうが安いことに気付いた。そこで全米を網羅するバス会社・グレイハウンド乗り放題パスを購入し、旅に出た。そして、ボストンのターミナルで買ったのが原書版「金持ち父さん」とその隣にあった「となりの億万長者」だった。  筆者にとっては「となりの億万長者」のほうがインパクトが大きかったのだが、「金持ち父さん」も十分に衝撃的だった。未だにはっきりと覚えている部分が二カ所ある。  「貧乏父さんは、子供がいい就職先を得るために履歴書の書き方を教える。金持ち父さんは、銀行から融資を引っ張ってくるための事業計画書の書き方を教える」  貧乏人と金持ちでは教育と思考の内容が全く違うのだ。筆者に事業計画書の書き方を教えてくれる金持ち父さんはいなかった。……というか、よくよく考えてみると筆者には“父さん”そのものがいなかったが、それはまた別の話だ。  もう一つはマクドナルドの話だ。 「私がセミナーの受講生に、この中でマクドナルドよりも美味しいハンバーガーを作れる人は手をあげて、というと大部分が自信たっぷりに手を挙げる。でも、ではなぜマクドナルドほどのチェーンを作れていないのかと聞くと、全員下を向く」  下地は言う。  「そういうことなんですよ。サッカーでも全く同じなんですよ。たとえばね、僕とクリスティアーノ・ロナウドとでは収入が千倍かそれ以上違いますよね。では僕と彼でフリーキックの精度が千倍違うのか、というとそこまで違うわけではないんですよ。やっぱり彼は世界中が見たいと思っている、注目を惹きつけられるから稼げるんですよ。今思えばですけど、サッカーの指導者って技術がどうとか、テクニックがどうとか、そういうことは沢山教えてくれましたけど、稼げるサッカー選手になるにはという観点からは何も教えてくれなかった気がします」  次回、下地奨の視点をさらに深堀りしていきたい。 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。  雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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