冷え切っていた中韓関係が回復の兆し アメリカへの牽制が主な狙いか

中国がここにきて突如、韓国との関係改善をはかったのはアメリカへの牽制とみられるが、日本との外交にどう影響を及ぼすか

 アメリカ・トランプ大統領のアジア歴訪を目前に控え、韓国と中国の急速な関係改善が行われている。  韓国・ハンギョレ新聞によれば、韓国・康京和(カン・ギョンファ)外相は30日、今後THAAD(高高度ミサイル防衛)体系の追加配置だけではなく、アメリカのミサイル防衛(MD)体系にも加わらないことを明らかにした。また、韓米日の安保協力体制はあくまで北朝鮮の核・ミサイル脅威に対する抑止力であるとし、軍事同盟には発展しないことについても念押しをした。  中国は、韓国へのTHAADの配備が、米日韓の3国による中国包囲戦略であると強く反発していたが、この康外相の発言を受け、冷え切った中韓関係も大きく改善する流れが出来た。  これにより、11月10日~11日にベトナムで開催される、APEC首脳会議の場での、文在寅大統領と習近平国家主席との直接会談が開催される可能性も一気に高まった。  中国政府は、康外相の発言に対し素早く反応。歓迎の意を伝えている。中国外交部のスポークスマンによれば、「我々は韓国のこの3つの立場(THAAD追加配備無し、MD不参加、軍事同盟発展を否定)を重視する」としている。  韓国へのTHAAD配備以降、中国の、韓国に対する嫌がらせは露骨であった。中国人観光客の集団渡航を禁じ、韓国の観光産業に大きなダメージを与えたことを始め、中国にある韓国企業ロッテ百貨店等に無理難題をふっかけ撤退にも追い込んだ。最近になって、韓国芸能人が、日本での活動を再び活発化させたのも、中国市場の急速な衰退があってのことだ。  韓国にとって、中国との関係改善は、アメリカとの安保体制構築と同様、大きな課題であった。中国側からしても、米日韓の安保体制の強化は看過できないものであり、表向きは北朝鮮の核開発に対する抑止力であったとしても、その先の「仮想敵国」は常に中国であり続けたからである。  韓国との関係改善を図ることにより、特には米韓の間にほころびを作ることが中国にとっては肝要であったし、今回の康外相の発言は、中国にとってどうしても引き出しておきたかった発言であるのだ。
次のページ
観光業での訪韓規制も解除。輸出業も回復の兆し
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会