「3時間天下」で終わったカタルーニャ共和国。独立宣言後、自治機能が停止され閣僚は全員解任に

白石和幸

「12月21日」の意味

 155条の適用というのはスペインで初めてのケースであり、全くの未知数。そこでスペイン政府がカタルーニャの自治を長く管理下に置くということに周囲で懸念もされていた。しかし、ラホイ首相は、焦らず時間を掛けて問題を解決するタイプである。だから、彼が当初から提唱していたように、“6か月程度スペイン政府の管理下に置いて、それから州議会選挙をし行う”というのも当然だろうと見られていた。

 それが、意外なことに12月に行うという発表には報道関係者にとって驚きであった。しかし、これはスペイン政府側にとっては有利な決断であった。というのも、今回独立を図った政党もこれから選挙対策に取り組まねばならず、スペイン政府のカタルーニャでの振舞いを批判している時間はなくなるからである。半年先の選挙となれば、政府に対して抗議デモなどを行うだけの余裕も生まれる。

 この決断からは、プッチェモンが選挙するからといって提示して来た交換条件をラホイ首相が受け入れなかったという理由が伺える。というのも、もしプッチェモンの条件を受け入れていれば、議会解散後も次の州政府が誕生するまで現閣僚がそのままポストを維持することになるからだ。しかし、155条を適用して、彼らを解任しておけば、中立的な立場から選挙準備をすることが可能だと考えたのであろう。これはラホイ首相の賢明な策である。

 ラホイ首相は上院での演説で「カタルーニャで救出せねばならないことは憲法に規定されている(155条)ではない」「そうではなく、違憲実行者の振る舞いによって引き起こされている弊害からカタルーニャを救出せねばならないということでなのである」「そして、カタルーニャの所有物を寛容さもなく支配しようとし、しかも歴史、文化、感情などが自分たちの独占物であるかのようにして、すべてのカタラン人を彼らの教義に従属させようとしている。それからカタラン人を守らねばならないのである」と述べた。

無視される半数の「独立反対派」住民

 確かに、現在のカタルーニャは、州民の半数は独立に反対しているにもかかわらず、独立に反対する市民はそれを表明するにも嘗てのように自由にどこでもそれを表明することが出来なくなっている。学校でもカタルーニャ独立に反対の生徒は差別されるという事態も起きている。そして、カタラン語を優先してスペイン語を排斥しようとする教育システムさえもが次第に力をつけているのである。(参照:「Info Libre」)

 既報のように、住民投票以降、カタルーニャからは既に1700社以上が本社を州外に移転させている。

 しかも、同州は、すでに750億ユーロ(9兆7500万円)の負債を抱えている上に、州のGDPの30%を貢献してきた2大銀行と大手企業40社がカタルーニャを去った段階で、独立できるような社会体制にもなっていないと言われている。このような現実を無視して敢えて独立しようとするのは、民主的であるとは言えない。

 かくして、「3時間天下」となったカタルーニャ州独立。検察はプッチェモン州知事、ジュンケラス副州知事、フォルカデル議長らを30日に訴追する為の準備を進めているという。反逆罪などで懲役25-30年の刑が下される可能性もあるそうだ。

 いずれにしても、まだカタルーニャが平常に戻るのには時間がかかるだろう。

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

1
2
3
4
5
関連記事
6
7