私は産業医面談にきた社員が「ハラスメントにあった・あっている」といったとき、しっかり話を聞く以外に、以下の3点をお伝えしています。
第1の処方箋:記録をつける
1つめは、記録をつけるということです。
なぜならば相談にきた時点では、実際にハラスメントがあったか否かは、あくまで個人(その社員)の声でしかないからです。通常は、実際にそのことを会社に伝え、調査が行われ、第3者がハラスメントの有無を判定するため、まずはその社員がハラスメントということの記録をつけることを提案します。
例えば、性格がだらしない、「今までそんな人見たことない」と言われて涙が出たなど、箇条書きのメモ程度でいいので、被害を受けたと感じた日時、場所、そのときに周囲にいた人(同席者)、具体的に何を言われた/された、そしてどうなったかを記録することを勧めます。
大切なのは、感情的なことを書きたくても、記録は客観的事実をしっかりと書くべきだということです。自分で記録できないときは、一緒に暮らす人にお願いするべきです。
第2の処方箋:相談相手を見つける
2つめは、相談相手を見つけておくことです。
相談相手にハラスメントについて話すことは、何かのときの承認になってくれます。また人に話すことで、約9割の人が気持ちが楽になると言われていますので、自分のなかだけにとどめて悩むのではなく、ぜひ辛い気持ちを共有できる人を見つけておきましょう。
この相談相手は同僚、友人、上司の上司、人事など会社の人がよいのか、社外のプライベートな関係な人がよいのかは個々人により考え方はさまざまです。今、ハラスメントを受けていなくても、自分だったら誰に相談するか、平常時から心構えを持ち想定しておくことが大切です。
第3の処方箋:会社を辞める覚悟を持つ
3つめは、会社をやめる覚悟をもてるかを自問することです。
ハラスメント被害を訴え、会社が調査した結果、会社の最終的認識として、ハラスメントはなかった。または、その社員の言うほどのものではなかったと結論づけられることはよくあることです。
また、たとえハラスメントがあったことを会社側が認めても、被害者が求め、納得するほどの加害者に対する罰則や指導がなされることは多くはありません。
そのようなとき、自分の会社に対し「会社をこれ以上信用できない」などのネガティブな感情を持つことは、しょうがないことです。しかし、そのような感情を抱いている状態でその会社でこれからも働き続けるか否かを決めるのは、自分次第であることを認識すべきです。
会社としてはもう対処した案件なのですから、残るのであれば自分のなかで折り合いをつけて、務めるしかありません。会社に不満不平を持ちながらも働き続きるのは、他でもない各社員の自己責任なのです。
会社に残ると決めたとき、自分の気持ちの整理を「割り切った」と表現する人はストレスをためることが少なく、「諦めた」と表現する人はストレスに悩んで体調を崩すことが多いと感じます。