一般的に働き方とは、通常の定時勤務のほかに(長時間を含む)労働時間、フレックス勤務の種類、短縮勤務、そのほか育児休暇や介護休暇などを指します。その根底には大きく2つの要素があります。
それは「やりがい」と「裁量権(コントロール度)」です。
やりがいとは、一人ひとりの社員が仕事で自己成長を感じているか、職場からの評価を感じているか。時にはなぜ自分がその職場で働いているのか、その意味を認識しているかということです。
新入社員は、自分の成長を日々実感できるので、働いても比較的疲労が溜まりにくいといわれています。ベテランであっても周囲の評価が感じられている場合は大丈夫です。
また、就職先や転職先が、タフな労働環境でも、なぜ自分がそこに職を求めたのか明確なら耐えられます。一方、あまり考えずになんとなくその会社に就職(転職)した人ほど、早くに潰れてしまう傾向があります。
2つめの要素である裁量権とは、職場におけるコントロールの度合いのことです。自分が決めたり、選ぶことができる範囲が大きい人ほど、疲労度は少ない傾向にあります。
どの仕事を同僚や部下に任せて、自分は何に集中するかを選択できる人、自己決定権が大きい人は、遅くまで働いても、ストレス度は少ない傾向にあります。仕事相手を選べる人、フリーデスク制で苦手な人からは離れて座ることのできる人も職場における心の疲労度は少ないです。
つまり働き方とは、会社だけでなく、社会的関心、さらに社員一人ひとりの関心といったもう一段階が必要でしょう。
一人ひとり社員にも意識改革を求めるべき余地がまだあります。電通の新しい計画からも、この視点は感じることはできませんでした。
武神健之氏
電通を働き方改革の単なるスケープゴートにすることなく、ほかの会社も、長時間労働という社会的な問題を自社の問題として、それぞれの労働環境の改善を計画してほしいものです。
それ以上に大切なのは、会社の改善計画作成にとどまることなく、社員一人ひとりが自分たちの働き方を見直すことが、今本当は求められているのです。
<TEXT/武神健之>
【武神健之】
たけがみ けんじ◯医学博士、産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『
職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書―上司のための「みる・きく・はなす」技術 』(きずな出版)、『
不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『
産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある