米ハリケーン被災で「遠隔医療」にフォーカス。世界ではドローン活用案も

Photo by MD Live

 8月下旬から9月上旬の間、ハリケーン「ハービー(Harvey)」「イルマ(Irma)」が立て続けに米南部を襲った。これらのハリケーンの規模は2005年のハリケーン「カトリーナ」に匹敵するほどの猛威を振るい、テキサス州やルイジアナ州、フロリダ州に壊滅的被害をもたらした。そこで、大洪水により孤立状態となった住民を救済する手段として注目を集めたのが「遠隔診療(オンライン診療)」である。  ハリケーンで被災した住民への遠隔医療サービスの提供に協力したのは、スマートフォンのビデオ通話を活用した遠隔診療サービスを強みとするエムディライブ社(MDLive)、ドクター・オンデマンド社(Doctor on Demand)、アメリカン・ウェル(American Well)などだ。ハリケーン襲撃日より数日間、遠隔診療サービスを無料で提供し、ハリケーン被害に遭った住民をサポートした。  災害発生後の1週間は病気のケアが制限されがちである。特に糖尿病などの慢性的な病気を患っている場合には、治療の中断が命取りになることがある。また、下水が逆流し、地上が汚水で溢れかえれば、感染症のリスクも避けられない。  テキサス州は米国50州の中で遠隔診療の推進に対して最も消極的であった。今年の初め、ようやく遠隔診療の普及を後押しする新法案を可決し、現在に至る。  日本国内でもスタートアップを中心に、遠隔診療プラットフォームを提供する企業が急増している。政府は「未来投資戦略2017」において、IoTやビッグデータ、人工知能、ロボット、シェアリングエコノミーなどを通じた第4次産業革命を中長期的な成長の原動力と位置づけるなかで、遠隔診療の推進も視野に入れている。スマートフォンのチャット機能を活用した遠隔診療の実証実験を進めるなど、官民一体となり、遠隔診療の普及に努めている最中だ。
次のページ
非接触で心拍数や呼吸速度を測定
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会