米ハリケーン被災で「遠隔医療」にフォーカス。世界ではドローン活用案も

 一方、南オーストラリア大学の研究グループでは、自然災害や紛争地帯での活用を想定したドローンの開発が進められている。同大学で開発中のドローンは患者の心拍数や呼吸速度などを遠隔で測定する仕組みとなっており、これは世界初の試みであるという。研究成果については、2017年8月8日、医用生体工学専門誌『バイオメディカル・エンジニアリング・オンライン(Biomedical Engineering Online)』の電子版に公開された。  ドローンはカメラや画像処理系アルゴリズムを標準装備しており、人間の顔や首を検出し、静止状態でなくても心臓の鼓動や呼吸数を正確に数値化。そのうえ、数名単位での測定・モニタリングを実現する。例えば交通事故で負傷後、救急車が来るまでの緊急用処置としても重宝しそうだ。  アフリカなどの発展途上国では、生後すぐに感染症に罹り、そのまま命を落としていく新ケースは後を絶たない。新生児向けのバイタルサイン計測用非接触型センターの開発を目論むなかで生み出されたのが今回のドローンであると英BBCは報じた。  2歳から40歳までの15名の被験者を対象に行った実証実験では、3メートル離れた距離からの測定に成功。ゆくゆくは50メートルや500メートル頭上でも使えるようになる。自然災害などにより孤立した被災者に対する新たな救済手段として期待が持たれる。  ドローンで被災者を発見し、バイタルサインを計測しながら、必要に応じて遠隔で医師による助言を得る。もちろんプライバシーや倫理的な問題は避けられないが、地震や豪雨などの自然災害と隣り合わせの日本において、ドローンと遠隔診療を組み合わせた医療サービスが定着する日は意外と近いのかもしれない。 <文/大澤法子(ロボティア)> 翻訳者・ライター。1983年、愛媛県生まれ。文学修士(言語学)。関心分野は認知言語学、言語処理。医療・介護分野におけるコミュニケーションに疑問を抱いており、ヘルスケアメディアを中心に活動中。 【参照】  ・mobihealthnews.com  ・unisa.edu  ・bbc.com
ロボティア】 人工知能(AI)、ロボット、ドローン、IoT関連のニュースを配信する専門メディア。内外の最新技術動向やビジネス情報、ロボット時代のカルチャー・生活情報をわかりやすく伝える。編集長は『ドローンの衝撃』の著者・河鐘基が務める。https://roboteer-tokyo.com/
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会