小池都知事の追悼文送付取りやめは歴史的事実も防災上の教訓も踏みにじる行為だ

国も認めている関東大震災時の朝鮮人虐殺

 中央防災会議(設置根拠法は災害対策基本法・議長は内閣総理大臣が務める)は、2008年に発表した『災害教訓の継承に関する専門調査会報告書』で、「犠牲者の正確な数は掴めない」「公式の記録で全貌をたどることはできない」としながらも、「当時の公的記録と公文書に依存した叙述を行う」と極めて抑制的な集計であるとした上で、関東大震災後の虐殺事件の被害者数を、朝鮮人488名、中国人3名、日本人87名と発表している。(参照:「中央防災会議」)つまり、関東大震災直後の朝鮮人虐殺は、国の防災政策を立案・企画する中央防災会議さえもが認める、歴史的事実なのだ。  この報告書は中央防災会議がまとめただけあり、その主目的を「歴史的事実の検証」ではなく「防災上の教訓の継承」に置いている。そして、上記のとおり朝鮮人虐殺が発生したことを認めた上で、「歴史研究、あるいは民族の共存、共生のためには、これらの要因について個別的な検討を深め、また、反省することが必要である」とし、「時代や地域が変わっても、言語、習慣、信条等の相違により異質性が感じられる人間集団はいかなる社会にも常に存在しており、そのような集団が標的となり得るという一般的な課題」として、「関東大震災後の朝鮮人虐殺」を重要な「防災上の教訓」として認識している。  このように、あの朝鮮人虐殺は、防災という観点からみても、極めて今日的な課題であり、不断にその検証と反省が加えられるべきものであることは疑いの余地はない。

小池都知事は防災責任者として不適格

 しかるに、東京都の小池知事は、9月1日に開催された朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典への追悼文送付をとりやめた。さらには記者会見において「あらゆる犠牲者を追悼していく」と自己の立場を正当化し、震災という「天災」による犠牲者と、官憲や一般市民による虐殺という「人災」の犠牲者を同一視するかのような、歴史的事実を踏みにじる無謀な発言を行なった。また、この小池知事の態度は、上記中央防災会議の報告書が朝鮮人虐殺を「防災上の教訓」としている立場から見ても、東京都の防災責任者として極めて不適格であると言わざるを得ないだろう。この知事のもとでは、東京都は「言語、習慣、信条等の相違により異質性が感じられる集団が標的となり得るという一般的な課題」を克服しえないまま、防災にあたらねばならぬことになるのだから。  こうした小池知事の暴挙ともいえる言動に対して、関東大震災後の朝鮮人虐殺について詳述する『九月、東京の路上で』の著者、加藤直樹氏が、「小池都知事の朝鮮人虐殺犠牲者追悼メッセージ取りやめに抗議します」という声明文を発表した。(参照)  歴史の教訓をみつめ、いつ起きてもおかしくない災害に備えるためにも、上記声明文が広く共有され、無謀な振る舞いをつづける小池都知事に反省を迫るものとなるよう、願ってやまない。 <文/HBO取材班 写真/時事通信>
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