朴槿恵・前大統領「誰のおかげでこの国があると思ってるの」 現在は出廷拒否のための詐病を画策か

「映画を制作している側に問題がある。誰のおかげでこの国があると思っているの」  これは韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領が文化体育観光部の金鐘徳(キム・ジョンドク)長官に投げた言葉だ。  金長官が今月7日に行われた朴元大統領の公判で証言したことによって明らかになった。この言葉はまさに「映画界のブラックリスト」の本質。 おそらく朴元大統領は政権に批判的な映画を作った文化人が、父が努力して創り上げた国を台無しにしていると信じて疑わなかった。  上記は9月10日に掲載された韓国ハンギョレ新聞の記事。この発言に登場している「父」とは1963年から1979年まで大統領を務めた「独裁者」と批判的評価を受ける朴正ヒ(パク・チョンヒ)元大統領のことだ。朴槿恵(パク・クネ)元大統領からしてみると、現代の韓国を作り上げた、自慢の父なのだろう。  まさにそんな「偉大なる父」への尊敬が微塵も感じられないと言いたげだ。朴元大統領指示のもと作成された、政権に批判的な映画や関係者の名前を記したとされる「ブラックリスト」の存在が波紋を広げている。  朴元大統領は国家情報員を送り込み、大手企業や配給会社の関係者を通じて常に映画業界の動向を監視。政権に有利なコンテンツ作りを強要していたとみられている。  近年、政治的に弾圧を受けた代表的な映画がある。「ダイビング・ベル/セウォル号の真実」。  2014年に死者299人、行方不明者5人を出した旅客船「セウォル号」沈没事故のドキュメンタリー映画である。映画はメディアや政府、警察関係者など多くの団体や行政役人が自身の失態を隠すためだけに保身的な言動に終始し、救助が遅々として進まない状況を現場の目線で捉えている。昨今明るみとなって疑問視され続けている、事故発生当時の朴元大統領の「空白の7時間」はもちろん扱われていないが、当時の政府対応を痛烈批判している。  もともと本作は2014年の釜山国際映画祭で上映される予定だったが、釜山市長が「政治的中立性を欠く作品の上映は望ましくない」と発言したことから上映中止を求め、行政による言論弾圧ではないかとの批判が巻き起こっている。  結局上映自体は行われたのだが、その後、映画祭の組織委員会執行委員長は更迭される処分がくだされている。この更迭騒動は、表面上映画祭の過程に不備があったとの理由だったが、これは報復人事ではないかとの批判が起こり、韓国の映画人が映画祭へのボイコットを呼びかけるなど当時大きな波紋が広がる結果となった。  当時朴元大統領は騒動を前に「このような不純な映画ではなく、健全なコンテンツを活性化せよ」と指示したとされている。この騒動によってブラックリストに名を連ねた業界人も多いのだろう。  また、ブラックリストに載った業界人は干される一方、政府から息のかかった業界人には莫大な助成金が給付されていたことも明らかになった。国家情報員がある映画監督に「政府賞賛を謳った愛国映画を作るなら、30億ウォン(約2億9千万円)の助成金を出そう」と持ちかけたことも証言されている。
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“仮病”で出廷拒否?!
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