今さら聞けない「介護保険」。その仕組みを知っておこう

介護認定と介護サービスの内容

 では実際に、どのようなときに介護サービスが受けられるのでしょうか。65歳以上の人(第1号被保険者)の場合は、原因を問わず介護が必要になった際は、役所に申請をして審査を経ることにより認定を受け、介護保険が利用できるようになります。40歳から64歳までの人(第2号被保険者)の場合は、末期がん、脳血管疾患、関節リウマチなど、16の特定疾患が原因で介護が必要になった際に、認定を受ければ介護サービスを利用できます。  介護認定手続きは、認定を受けたい人またはその関係者が、市区町村の窓口(地域包括センター)に出向き申請をします。すると本人に対する訪問調査が行われ、心身の状態を調べます。それをもとに分析がされ、主治医の意見書などと合わせ、専門家の審査を受け認定がされます。結果が出るまでに申請から約1ヵ月近くかかります。認定の基準は、症状の軽い順から、要支援2、1、要介護1、2、3、4、5の7ランクとなっており、要介護5が一番重い症状になります。  介護認定のランクにより、支給される金額や受けられるサービスが異なります。在宅介護にせよ、施設介護にせよ、一部を自己負担し、その認定ランクに応じたサービスを利用できます。とくに在宅の場合、定期的な訪問介護、福祉器具の貸与、自宅改造のための補助などから利用できます。介護保険の範囲を超えるサービスを受けたい場合は、すべて自己負担となります。

自己負担割合は1割から3割

 実際に介護サービスを受ける場合、介護保険から全額支給されるわけではありません。その金額の1割から3割は自己負担する必要があります。この負担率は年収により決まります。これまで年収の少ない人は1割負担、単身で年収280万円以上の人は2割負担となっていました。2018年8月以降、単身で年収340万円以上の人については、新たに3割負担に変更されました。340万円未満の人は従来通り2割負担です。実際に利用している人を調べてみると、約9割が1割負担となっています。  介護保険制度は、高齢化の進行により財政的には困難な環境になりつつあります。団塊の世代といわれる終戦直後に生まれた人たちも、これから75歳を迎えようとしています。独居高齢者や認知症高齢者の増加も確実です。介護保険が成立した2000年度では、介護サービスにかかる総予算は3.6兆円程度でしたが、2015年度には9.8兆円と大幅に拡大し、2017年度では10兆円を優に超える金額になっています。今後も増加傾向が続くのは確実です。  介護サービスを受けたいと希望する人は、着実に増えてくるはずです。制度を維持するためには、認定基準をこれまで以上に厳しくする、軽度者向けの家事援助・生活支援は廃止する、40歳以上の人の保険料を値上げする、保険加入者を40歳より若い世代まで引き下げる、といった方策も検討されています。ただ制度そのものの抜本的改善策は、まだ見つかっていないのが現状です。 <文/黒木 達也> くろき たつや●経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職
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