ビジネスと社員の能力伸展の鍵は「管理しない経営」!?

ユナイトアンドグロウ代表取締役社長・須田騎一朗氏

ユナイトアンドグロウ代表取締役社長・須田騎一朗氏

 「経営」というと、進捗や人材、カネやモノといったものを「管理」することが不可欠だと思われがちだ。  しかし、「管理しない経営」で、働き方革命を実現している企業があるという。中堅・中小企業の情報システム部門やバックオフィス部門を支える「シェアード社員」というコンセプトで知られている「ユナイトアンドグロウ」だ。  今回、分解スキル反復演習型能力開発プログラムの開発者でありトレーナーである山口博氏が、同社の代表取締役社長である須田騎一朗氏に、「管理しない経営」の秘密について迫ってみた。

自ら考え、動き、成長する働き方を実現

山口:私がファシリテーターを務めた、働き方改革自社展開プラン共創ワークショップで、須田氏にプレゼンテーションをお願いしました。そこで、「上司の指示がなくても勝手に動ける」「時間管理は自分で行う」「誰と組んで仕事をするかは自分で決める」……自律裁量を極大化したマネジメントを実践されていると話されていて、非常に共感しました。 須田:何も新しいことをしているというわけではなく、「自ら考え、自ら動き、自ら成長する働き方」を実現しているに過ぎません。もしかしたら、戦後しばらく世の中が混沌としてる時代は、貧しさの中でもがきながら、人々の意識はそんな感じだったのではないでしょうか。  高度成長期に、社会整備や事業拡大が急速に進む中、統制、管理、指揮命令といったものが過剰に取り入れられてしまったように思います。それに合った人事制度、教育研修ができてしまい、製造業を中心に、販売組織に最適な兵隊をつくることに行き過ぎてしまった。ところが実際の社会は急速に知識労働者中心に変わってしまったのではないでしょうか。 山口:制度をつくり、管理することが不要だとは言いませんが、それだけでは人は動かず、パフォーマンスは上がりません。働き方改革を実現し生産性を向上させるためには、自ら考え、動き、成長することが不可欠です。理屈でわかっていても、それを実現している経営者は少ない。いつからそのような考え方で経営するようになったのでしょうか。

退路を断って取り組む

須田:やりたかったことは、中小企業のIT部門を助ける、それによって、中小企業を元気にして、世の中を元気にすることでした。どうやってそのミッションを達成するか、いろいろな方法を実施してみましたが、もっとも効果が高かったのが、「シェアード社員」だったんです。つまり、当社が優秀なIT人材、優秀になりそうなIT人材を確保し、その人材が顧客にサービスを提供する方法です。  優秀な人材は、業務効率を向上させ、生産性を高め、いくつもの中小企業を支援できるようになります。このシェアード社員を極大化していくためには、自ら考え、動き、成長するモデルを実現していくしかないんです。 山口:今日のビジネスパーソンで、このモデルで能力発揮できる人材はそう多くはないのではないでしょうか? 須田:中小企業を助けたいと思い、助けることができない人には、難しいかもしれません。しかし、一定の能力さえあれば、本人の考えや行動や学習を支援していくことで、人はさらに成長していくものだと思っています。 山口:バックアッププランは立てなかったのでしょうか。 須田:崖っぷちにたっていないと新しいものは生まれないと思っています。不人気職務と言えるIT部門の中に、それも中小企業に、光る最高の人材を投入しようとしているわけです。逃げ道があったら、そんな難しいことはやらないでしょう。 山口:いつから、退路を断つ生き方をするようになったのでしょうか。 須田:そもそも、少年時代から弱者の視点に立って社会の問題を是正したいと思っていて、ジャーナリストを目指して早稲田大学文学部に入学しました。その時も、そこしか受験していませんでした。しかし、入学してみると、バブル絶頂期で、大学はレジャーランド化し、このまま卒業すると“大企業に就職してしまう”だろう自分に逡巡していたんです。  考えあぐねた結果、卒業するから大企業へ行くことになる、卒業しなければ大企業に行くことはないという考えに行き着き、大学を3年で中退しました。  がんばりたい自分とさぼってしまう自分がいる。がんばりたい自分を生かすためには、さぼりたい自分を防げばよい。だから退路を断ったんです。
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「現場に任せる」という判断
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