旧・奈良そごう。イトーヨーカドー奈良店となっていたが、9月10日で閉店することとなった。
奈良市にある「元・百貨店」と「元・刑務所」。
全く関係のないこの2つの大型施設が、奈良の街に潜む2つの大きな社会問題を解決する糸口になろうとしている。
それは一体どういうことであろうか。
「長屋王の呪い」で閉店?――元・そごうの「日本一豪華なイトーヨーカドー」
奈良市街地の西辺にあるイトーヨーカドー奈良店。外観も内装もスーパーマーケットらしからぬこの店舗は、1989年から2000年まで百貨店「奈良そごう」だった建物だ。
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百貨店の面影が色濃く残る豪華な内装。写真のドアの取っ手は鹿を象ったものだ
奈良そごうが建設された当時はバブル真っただ中。館内には金の夢殿、からくり時計、川や流れ星が流れるレストラン街、回転展望レストラン、美術館などが設置され、関西最大級の郊外型百貨店として、そして日本有数の豪華さを誇る百貨店として大きな注目を集めたものの、その運営コストの高さもあり僅か11年で閉店した。
その後は2年半の全館閉鎖状態を経て2003年にようやく奈良県内初出店の「イトーヨーカドー」を核としたショッピングセンターとして営業再開を果たしたものの、近年は競争の激化から専門店部分に空き店舗が目立つ状態となっており、イトーヨーカドーもこの9月10日を以て閉店、再び全館閉鎖となることが決定した。
6基のエスカレータを並べた名物「トリプルクロスエスカレータ」。過剰な設備も閉館の一因であると言われる
当地は奈良時代に藤原氏から無実の罪を着せられ自害したとされる皇族「長屋王」(684~729年)の邸宅跡にあたり、2度に亘る大型店の閉店は「長屋王の呪い」であるとさえも言われている。
もう一方の「元・刑務所」は、奈良市街地の北辺にある「奈良監獄」跡だ。
奈良監獄は1908年に明治政府が監獄の国際標準化を掲げて建設した五大監獄(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)の1つとして開設され、戦後に「奈良少年刑務所」へと転換された。
旧・奈良監獄正門
奈良少年刑務所は2017年3月に閉鎖されるまで奈良監獄建築当時の赤煉瓦造りの建物がほぼそのままの形で残るなど、高い歴史的文化的価値を有しており、2016年に重要文化財指定手続と法務省による「旧奈良監獄の保存及び活用に係る公共施設等運営事業」として施設の再活用を図ることが決定されていた。
この7月には最後の見学会が実施され、明治の面影が残る館内を一目見ようと多くの人が押し寄せたことでも話題となった。
7月に実施された見学会には多くの人が訪れた
さて、ここまで書いたところで、「奈良の街に潜む大きな2つの社会問題」とは何のことか分からない読者が殆どであろう。
その社会問題とは「観光客向け商業施設(土産品店・飲食店)の不足」と「宿泊施設の不足」である。