流れの中で行われる臨機応変な対応は一流の接客スタッフさんの暗黙知の中にあることがほとんどです。そこで以前、私はそれを見える化するために某店舗で買い物中のお客さんと接客スタッフさんとのやり取りを参与観察したことがあります。そこでわかったことは、購買段階に応じて特徴的な表情・微表情や動作の変化があるということです。
状況別のお客さんの表情・微表情や動作を読みとるスキルが身に着けば、流れの中で声をかける・かけないタイミングを把握できるだけでなく、いつどんな声をかければよいかがわかるようになるのです。よくある状況をいくつかピックアップしたいと思います。
・来店時~来店数分間のお客さんの表情・微表情・動作
【目的なくフラフラ歩く(ランダムウォーク)+真顔】
⇒声をかけない方がよいでしょう。ただ商品を見ているだけのお客さんの可能性が高いです。真顔は感情がない・あるいは弱い状態です。感情がない・弱い状態とは、商品に刺激を受けていない状態です。だからただ見ているだけの状態なのです。眉が引き上げられ興味・関心表情になったり、特定商品への注視が生じ眉が下がり眉間にしわが寄れば、興味・関心が高まり、熟考状態へ移行していることをがわかりますので、この時点でこのお客さんは声かけ候補となります。
【目的なくフラフラ歩く(ランダムウォーク)+眉間のしわ寄せor額に波状のしわ】
⇒声かけ候補です。何か特定の商品を探しているお客さんの可能性が高いでしょう。眉間のしわは熟考を示し、額の波状のしわは不安を示します。熟考や不安表情は何かを探しているときに生じる傾向にあります。
・商品を触っている・手にしているとき
【真顔or弱い眉の引き上げ】
⇒声をかけない方がよいでしょう。真顔は先ほどの場合と同じ理由です。表情筋の動きの強さと感情の強さとは連動しています。眉の引き上げは興味・関心を示しますが、その動きが弱ければ興味・関心が強くないため、声かけ候補とはなりません。強く眉が引き上げられたり、眉間にしわが生じ始めたら声かけ候補となります。
【商品の凝視+眉間のしわ寄せ+自己タッチ(アゴや頬を、腕などをさする動き)の増加】
⇒声かけ候補です。お客さんの近くにさりげなくスタンバイしていましょう。これらの動きのコンビネーションが意味するのは、比較・検討です。予算や類似商品、商品の機能を考慮している段階です。この段階で商品に対する質問を聞いたり、セールやお得情報をお知らせするとよいでしょう。
声をかけるべきか?かけないべきか?その答えは、お客さんの微表情の中にあるのです。
【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『
0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。術』飛鳥新社がある。