宇宙には届かずも、大きな成果 – 日本発のロケット会社「インターステラテクノロジズ」の挑戦

インターステラテクノロジズ(IST)が打ち上げた観測ロケット「MOMO」 提供 インターステラテクノロジズ

 北海道を拠点とする宇宙企業「インターステラテクノロジズ」(IST)は2017年7月30日、同社にとって初となる宇宙まで届くロケット、「MOMO」(モモ)の打ち上げを実施した。  MOMOは一般に宇宙への入り口とも呼ばれる、高度100kmにまで到達することを目指していたが、飛行中にトラブルが起き、打ち上げそのものは失敗に終わった。  しかし同社にとって、そして欧米に出遅れている日本の宇宙ビジネスにとって、宇宙に向けた大きな一歩を踏み出したことは間違いない。

観測ロケット「MOMO」とは

 インターステラテクノロジズ(IST)は、2013年に実業家の堀江貴文氏らが立ち上げた宇宙企業で、その前身の企業や有志団体を含めると、10年以上にわたってロケットの開発を続けてきている。  今回ISTが打ち上げた「MOMO」は、全長9.9m、直径0.5mの電柱ほどの大きさのロケットで、実験装置などを高度100km以上の宇宙空間に打ち上げることを目的とした、「観測ロケット」(英語ではサウンディング・ロケット)という種類のロケットである。  人工衛星を打ち上げることを目的としたロケットと比べると、打ち上げに必要なエネルギーが少ないため、開発は比較的簡単で、また将来的に衛星を打ち上げるロケットを開発する際の土台にもなる。  もちろん、たんなる土台ではなく、観測ロケットには観測ロケットの需要も多い。たとえば、まず文字どおりの宇宙空間の観測がある。衛星でも宇宙空間の観測はできるが、その開発や打ち上げには莫大な資金が必要になる。また新しい技術を使った装置などは、いきなり衛星に積んで打ち上げるのはリスクが大きい。そこで比較的簡単な観測や新しい装置の試験などで、観測ロケットを使うケースは多い。  また、衛星は地球のまわりを回っているため、たとえば地上に対して「縦」方向に宇宙を観測したい場合には不向きである。しかし観測ロケットなら、まさに縦に飛ぶことができるので、衛星は観測が難しい宇宙や高層大気の現象を捉えることもできる。  もうひとつの大きな用途としては微小重力(無重力)実験がある。宇宙に向けて上昇するロケットが、エンジンを止めて慣性で飛ぶ段階になると、その内部は微小重力環境になる。これを利用して、ロケットに搭載した実験装置などを動かし、成果を生み出したり、データを取ったりする。  この他にも、ロケットの側面に社名や宣伝を入れるなどし、打ち上げで注目を集めることによる広告媒体としての需要などもある。
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失敗だが、安全に落下
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