打ち上げられたMOMO 提供 インターステラテクノロジズ
8月3日現在、ロケットにどのようなトラブルが起きたのか、その原因は何かということについては、まだ明らかにはなっていない。
記者会見で同社の稲川貴大代表取締役社長は、テレメトリーが途絶した理由について、「現時点で考えられることとしてだが」とした上で、「高度約10km、マッハ1.3程度というと、『マックスQ』にあたるため、ここで機体に何らかの不具合が発生した可能性が高い」と語った。
「マックスQ」というのは、ロケットが飛行中に、空気から受ける圧力が最大になる時点のことをいう。ロケットは打ち上げ後、エンジンの力でぐんぐん加速するため、空気から受ける圧力が大きくなる。その一方、空気そのものはロケットの高度が上がるにつれてだんだん薄くなっていくので、飛行中のどこかで、空気から受ける圧力が最大になる場所がある。
これをマックスQといい、ロケットによって異なるものの、MOMOの場合はちょうどテレメトリーが途絶した、高度約10kmをマッハ約1.3で飛行中のあたりがその領域にあたる。
空気から受ける圧力が最大になるということは、その影響で機体が曲がったり、振動したり、加熱したりとさまざまなことが起こりうる。そして、その結果として機体が壊れることも起こりうる。古今東西、マックスQで機体が損傷し、打ち上げに失敗したロケットは枚挙にいとまがない。
MOMOもまた、マックスQで機体が破損し、その結果電気のケーブルなどが切断され、そしてテレメトリーが切れた、という可能性があるという。
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テレメトリーが切れる直前の、MOMOに搭載されたカメラの画像。青い地球が見える 提供 インターステラテクノロジズ
今回の打ち上げ実験について、同社は「ロケットを設計・製造すること」、「実際に打ち上げを行ってロケットの特性を取ること」を目的としていた。そしてその中の目標の一つとして、「高度100kmの宇宙空間に到達すること」を目指していた。
結果として、ロケットの設計・製造は完了し、そして実際に打ち上げまでこぎつけた。そしてテレメトリーの情報は、途絶する66秒後まで、すべてのデータが正常に来ていた。また、ロケット開発にとって一番の肝となるエンジンも、実際の打ち上げの中で(通信途絶まで)きちんと動作していたことが確認されたという。
そのため稲川社長は会見で「(打ち上げ実験として)非常に満足」と語り、同社もプレスリリースの中で「今回の打ち上げ実験では多くの成果が得られ、今後のロケット開発に向けての大きな前進となりました」と述べている。
もちろん、機体にトラブルが起き、「高度100kmの宇宙空間に到達すること」という目標のひとつが達成できなかったことはたしかなので、その点では打ち上げ”そのもの”は失敗したと言えるかもしれない。
しかし、打ち上げ実験として全体を見れば、エンジンの性能が実際の飛行の中で示されたこと、打ち上げまでの準備や手順を確認できたこと、そして実際に打ち上げ、トラブルという次回に向けた課題が見つかったことなど、今後につながる大きな成果がいくつも得られたことは明らかであり、「打ち上げ実験としては成功」、もしくは「良い実験だった」と言えよう。