実はメンタル不調者を出さない上長、ハラスメント被害者を出さない上長、リーダシップのある上長は3つの「はなす」のほかに、もうひとつの「はなす」ができています。
私は研修などではあえてそれを4つ目として、花をもたせる意味で「華す」という言葉でお伝えさせていただいています。
「華す」とは、部下に任せて、そして成功体験を積んでもらうことが、部下の成長や主体性につながるという意味です。「放す」と「離す」と前述の「いる」という言葉かけができてはじめて、「華す」ということが可能になります。
リーダーシップのある上長、ハラスメント被害者やメンタルヘルス不調者を出さない部署のコミュニケーションが上手な上司というのは、部下に仕事をただ任せるだけでなく、小さいながらも成功体験を積ませるということを繰り返し経験させます。
もちろん「はなす技術」のある人たちが、常にそういうことを意識しているわけではないでしょうが、おそらく共通して、成功体験がすなわち主体性をもたせるということができるとわかっているのでしょう。
では、どうやれば成功体験が主体性をもたらすのでしょうか。この間にあるのが、達成感です。短期間の集中や頑張りで達成感を得たことのある人は短期間に強く、長期間の努力や積み重ねで達成感を得たことのある人は、長期間に強く、仲間との協力により達成感を得たことのある人は、協力・仲間・協調性で強く、困難な状況でもすぐに諦めずに自ら対処して行くのです。
武神健之氏
では、達成感を得るためにはどうしたらいいのでしょうか。それは、達成するまで部下にやらせるしかありません。上司は部下が達成するまで見守り応援するしかありません。だからこそ、適切な時間的空間的距離感や、確認ではなく承認の「いる」言葉が用いられるのです。
できる上長から部下は、この達成感を学んでいるのです。これらのことを意識して、「はなす」技術を使ってみてください。
<文/武神健之>
【武神健之】
たけがみ けんじ◯医学博士、産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『
職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書―上司のための「みる・きく・はなす」技術 』(きずな出版)、『
不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『
産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある