筆者も恐怖体験!「中国で日本のスパイが捕まった」説は本当か

「日本人のスパイが捕まって拷問された」

 途中でところどころライフルを装備した中国の兵隊に通りがかる車のいくつかが検閲を受けている場面に遭遇したが、検閲されそうな地域に差し掛かるとすかさずタクシーの運転手から「アメリカ人の顔を布で隠せ」との指示があり、すべてをやり過ごすことができた。別に隠すことは何もないのだが。  タクシー運転手曰く「白人のような目立つ容姿だと必ず検閲されるので隠しておいたほうが楽だ」とのこと。  私はアメリカ人の通訳で雇われている朝鮮族の付き人かなにかだと勘違いされていたので敢えて日本人だと名乗ることもしなかった。しかしながら彼は「アメリカ人や韓国人よりも面倒なのは日本人である、以前この町で日本人のスパイが逮捕されたので検閲がかなり厳しくなっている」と続けた。地元の人間たちは皆噂しているらしく、韓国人やアメリカ人は軍に検閲されても20~30分程度で済むそうだが、日本人だった場合3~4時間は開放されずみっちり調べ上げられるらしい。  前述したとおり、たいへん複雑な情勢の地域なので中朝国境地帯でこの捕まった日本人というのがどんな目的でいったい何をしていたのか知る術はないが、諜報を担当する機関の人間であった可能性は高い。  というのも、以前日本で政府関係者の方とこんな会話をしたからだ。 「君の中国の土産話は面白いなあ、もっと教えてくれ」と仰るので、ご自身で旅行されたほうがきっと楽しいですよと勧めたのだが「私は所属している部署の関係で中国に個人的に渡航することはまずない。」とこぼした。  もちろん彼の所属部署を詮索するようなことはしなかった。断片的な情報で判断するのは早計かもしれないが、私はこの延辺であった一件と彼の話が途端にすべて辻褄があった気がした。  スパイ行為を行ったとされる邦人は、実は本当に派遣されたサラリーマンだったのかもしれないし、確定的なことは言えないが、参考になれば幸いである。 <取材・文/なかはた じゅん(TwitterID:@cider1d1l> 北京在住の大学生。日中朝英の4言語を操り、現在はロシア語の勉強中。中国にいる北朝鮮留学生や旧ソ連圏の人々と日々交流しながら、北朝鮮情勢の一端を考察している。
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