ニューヨーク在住のゲイ日本人弁護士「“カミングアウト”は本来、自分自身に対してするもの」

行進する、乳房を切り取った女性

性別のない第三の呼称、「Ze」「Mx」

 英語の三人称単数形には本来SheとHeのみであるが、ここ最近になって「彼/彼女」を意味する「hir」や、Theyの単数形「Ze」という呼び方が登場した。実際ハーバード大学など、アメリカにある有名大学の一部では、これらの新しい代名詞でのID登録ができるようになっている。  さらには、Mr(ミスター)、Ms(ミズ)、Mrs(ミセス)、Miss(ミス)などといった馴染みの呼称の他に、「Ze」、「Mx(ミクス)」なる呼び方がオクスフォード辞書に新語として掲載されるようになった。どちらも自分のアイデンティティが男性でも女性でもないと感じていたり、性別を特定されるのを好まなかったりする人のためのジェンダーニュートラル(中性的)な言葉の選択肢が今、増えつつある。  ニューヨークの人気ブロードウェイミュージカル劇場のトイレ前には、「自分のアイデンティティにあったほうのお手洗いをお使いください」と掲げられたメッセージ。地下鉄の壁には、「ニューヨークの日常」をテーマに描かれたゲイ2人が手をつないだモザイク画。こう見ると、アメリカの大都市には、もはやLGBTの人々を「少数派」とする雰囲気すら消えつつあるのかもしれない。  社会的少数の立場にいる人は強く、思いやりに満ち溢れている人が多い。人に分かってもらおうとする術が身にしみ込んでいるため、話し方もうまく、越えてきた山の険しさが隠さずとも見えてくる。筆者にもマイノリティとして活躍する友人が多くいるが、総じて彼らは皆「努力の人」だ。  マイノリティは、武器だ。皆がそれぞれ、何かしら自分の誇れる少数な部分を持ち、乗り越えようと努力することで、人は強く優しくなれるのではと、彼らに会うたびに教えられているような気がする。 <文・橋本愛喜>
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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