経営トップが不在となったUber。キーマン入れ替えは吉と出るか

 ライドシェア最大手であるUberテクノロジーズのトラビス・カラニックCEOが辞任しました。自ら率先して辞任というより、株主の圧力により、辞任させられたといったほうがいいでしょう。  これは異例の事態です。そもそも、カラニック氏はUber共同創業者。セクハラなど、いろいろ問題とされる企業風土を作り上げた悪しき功績はあるものの、Uberの企業価値を700億ドル(約7兆7900億円)とまで評価される会社に育てた、いわば剛腕経営者であることは事実です。  カラニックCEO辞任は、自ら創業し、ここまで大きくした会社から「追い出された」に近いものがあるわけです。  今回のケースでは、カラニックCEO辞任の背景には、株主の圧力があったとされています。  具体的には、主要5株主が退任を迫ったとされていますが、中でも、主要株主の1社であるベンチマークというベンチャーキャピタルを中心に話が進められたとされています。  そのベンチマークの中には、ベンチャーキャピタリストとして著名であり、早い段階からUberの将来性を見込んでいたビル・ガーリー氏も含まれています。  ガーリー氏はUberの取締役を任されていたぐらいですから、カラニックCEO辞任に際し、大変な影響力があった人物と考えれてもいます。  主要株主が辞任を迫り、カラニックCEO辞任。そしてその翌日、辞任を迫った側であるガーリー氏が、Uberの取締役を辞任する、と報じられました。  いったい何が起こっているのでしょうか?  ブルームバーグは、Uber内にガーリー氏の敵が生まれたから辞任する、とする関係者の話を報道しました。  よくよく考えてみると、Uberは企業価値700億ドルではあるものの、設立は2009年という、生まれてから10年も経っていないベンチャー企業です。創業者CEO中心に会社の風土が生み出され、急成長を遂げてきたベンチャー企業において、創業者CEOを支持する人が多くいるのは当然のことでしょう。  ガーリー氏はこれまでカラニック氏を支えてきて、取締役でもあった。なのに、カラニック氏批判を始めた。その後、カラニック氏はCEO辞任という結果になってしまった。  創業者CEOの支持者の目線で考えると、ガーリー氏を敵視したい気持ちも分からなくもないでしょう。  名物CEOは辞任、Uberの将来を見込んだ著名ベンチャーキャピタリストも取締役辞任。超急成長を遂げたUberの主要メンバーの交代が進んでいます。
次のページ
次期CEOが背負う、2つの大きな課題
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会