砂糖と“アレ”が組み合わさったら、ドラッグとなる! だが単独では……

「砂糖中毒」は嘘だったことが判明。だが、特定条件では依存性を発揮する

 ここ数年、「砂糖中毒」という言葉をよく聞くようになりました。タバコ中毒やアルコール中毒のように、砂糖に対して極度の依存を起こした状態のことです。  糖質制限ダイエットの世界では昔から有名な説で、なかには「砂糖にはコカイン並みの依存性がある」といった主張をする医師も存在。糖質には脳をダイレクトに刺激する作用があり、ドラッグと同じような快感をもたらすというのです。  その結果、多くの人は砂糖や炭水化物なしではいられなくなり、肥満、疲労、イライラ、不安といったあらゆる不調の原因になるんだとか。事実なら、まことに恐ろしい話です。  しかし、どうにも怪しい印象がぬぐえません。本当に砂糖がコカイン並みの快楽をもたらすなら、角砂糖への依存が社会問題になり、すでに法律で規制されていてもおかしくないようにも思えます。果たして、「砂糖=ドラッグ」説は事実なのでしょうか?  そもそも、砂糖の中毒性が騒がれるようになったのは、2008年のマウス実験がきっかけになっています(1)。プリンストン大学の研究チームが、マウスへ砂糖をあたえ続けたところ、脳に大量の快楽物質(オピオイドとドーパミン)が分泌されたうえに、実験後には重度の禁断症状まで確認されたのです。このデータだけを見れば、確かに砂糖はドラッグと同じように思えるでしょう。  ただし、これはあくまで動物実験の話。実は、ヒトを対象にした研究では、砂糖の依存性はまったく認められていません。  現時点で最新のデータは、2017年にマーストリヒト大学が発表した論文です(2)。このなかで、研究チームは健康な男女1,495人を対象に食品の依存度を調べ、全員のBMIとの関連を調べました。  そこでわかったのは、以下のような事実です。 ・95%の人は何らかの食品に依存した経験を持っていた ・砂糖だけの食品に依存を起こすケースはほとんどなかった  誰にでも食品への依存は起こりえるものの、砂糖中毒にかかった人はほぼゼロだったようです。
次のページ
中毒を引き起こすのは、砂糖と”アレ”の組み合わせ
1
2
ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会