それでは、依存を起こしやすい食品とはどのようなものでしょうか? 研究チームは次のようにコメントしています。
「もっとも依存のような行動が確認されたのは、砂糖と脂肪が組み合わさった食品だ。基本的に太りぎみの人ほど『砂糖+脂肪』の消費量が大きく、おもに砂糖だけをふくむ食品は肥満との相関がなかった。
砂糖が多い食品は依存性が低く、肥満のリスクにもなりにくい。過去のデータと照らし合わせてみても、食べ過ぎの原因はカロリー密度と個人の環境によるところが大きいだろう」
あくまで砂糖に依存を起こすようなパワーはなく、ケーキやアイスクリームのように大量の糖分と脂肪が組み合わさったときに、はじめて食べ過ぎが起きるというわけです。
もうひとつ、2016年の研究も見てみましょう(3)。
これはケンブリッジ大学によるレビュー論文で、過去に行われた砂糖中毒に関する127件の実験データをまとめたもの。「砂糖中毒」について考えるうえでは、現時点でもっとも信頼性が高い内容になっています。
研究チームの結論は、以下のとおりです。
「ヒトが砂糖に依存を起こすという証拠は存在しなかった。動物実験のデータでは、確かに砂糖中毒のような行動はみられるが、それはあくまで断続的に砂糖へアクセスできる環境があったときだけだ。
砂糖中毒に近い行動は、報酬が多い食品が断続的に手に入る環境によって引き起こされる。決して、砂糖に神経科学的な作用があるわけではない」
簡単に言いかえると、砂糖で脳がおかしくなるような事実は存在せず、たんに「お菓子屋さんが近所にある」や「戸棚にケーキが置いてある」といった誘惑の大きい環境によって、あたかも依存のような行動が起きるというわけです。実に常識的な結論と言えるでしょう。
まさに大山鳴動してネズミ一匹。どうやら「砂糖=ドラッグ」説は、動物実験の不確かなデータをもとにした空騒ぎだったようです。
もちろん砂糖の摂りすぎは厳禁ですが、もっとも大事なのは総カロリーとのバランス。無闇に怖がる必要はまったくありません。
1.Avena NM, et al. “Evidence for sugar addiction: behavioral and neurochemical effects of intermittent, excessive sugar intake.”(2008)
2.Markus CR, et al. “Eating dependence and weight gain; no human evidence for a ‘sugar-addiction’ model of overweight.”(2017)
3.Westwater ML, et al. “Sugar addiction: the state of the science.”(2016)
<文/Yu Suzuki>
【Yu Suzuki】
月間100万PVのアンチエイジングブログ
「パレオな男」管理人。「120歳まで生きること」を目標に、日々健康維持に励んでいる。アンチエイジング、トレーニング、メンタルなど多岐にわたり高度な知見を発信している。NASM®公認パーソナルトレーナー。あまりに不摂生な暮らしのせいで体を壊し、一念発起で13キロのダイエットに成功。その勢いでアンチエイジングにのめり込む。11月11日、初の著書『
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