身柄が拘束されてしまっている状態で、他の弁護士を探す方法は、シャバにいる家族や友人知人に頼んで探してもらうのが普通だ。その手段が使えなければ、警察を通じて地元の弁護士会に連絡してもらい、刑事事件の得意な弁護士を派遣してもらうしかない。
当番弁護士制度が導入される以前は、この方法しかなかったわけだが、弁護士会から弁護士を派遣してもらうと、契約するしないに関係なく、接見に来るだけでその弁護士の出張費と相談料が発生してしまう。
金額的には出張費が1万~2万円と相談料は30分5000円程度が相場だ。もっとも最近は初回相談料は無料という弁護士もいるし、私選弁護人として契約を結べば、相談料はかからない。
そうした出費を覚悟して、気に入った弁護士と出会えるまで、何度でも弁護士会に弁護士の派遣を依頼するのは可能だ。しかし、刑事事件は初動が勝負で、迷っている間でも刑事手続きはどんどん進んでしまう。あまり迷っている時間はなさそうだ。
では、私選弁護人契約を結ぶには、どのくらい掛かるかというと、刑事弁護費用は「着手金」「諸経費」「成功報酬」の3つが基本である。
着手金というのは、弁護人として正式に契約を結ぶ時に支払うお金で、2017年現在30万~50万円くらいが相場だ。被疑者自身が最初から罪を認めていて、後はいかに刑罰を軽く済ますかという目的で弁護士を雇う場合、着手金は30万円くらいである。一方、痴漢冤罪のように逮捕容疑を否認し、無実を争うケースは“困難事件”と呼ばれ、着手金も50万円くらいが相場になる。
次の諸経費は、身柄を拘束されている被疑者の元へ接見に来るための交通費とか、事件の資料整理のためのコピー代といった文字通り諸経費だ。これは弁護活動中に発生するモノで、支払い方法は弁護士が領収書を提示して、その度に支払うか、月ごとに締めてまとめて支払うかは弁護士ごとで違ってくる。
そして、成功報酬は、私選弁護人としての仕事が終わった時点で支払う報酬である。弁護人の仕事の終わりというのは、
・事件が不起訴になった場合
・裁判で判決が出た場合
になるのが基本だ。
不起訴処分になれば、その事件に関する刑事手続きは終了なので、当然、弁護人の仕事も完了する。ところが裁判の場合は判決が出たからといって、それで終わりとは限らない。判決に不服があれば、控訴や上告をしてまだまだ裁判は続くのだが、弁護人の仕事は、裁判の判決を目安に一旦終わるのである。
控訴や上告をして、引き続き裁判を続けるのであれば、もう一度着手金を支払い、改めて弁護人契約を結び直すことになっているのだ。もちろんこの時、同じ弁護士と弁護人契約を結ばず、他の弁護士にチェンジするのも自由だ。
どちらにしても弁護人としての仕事が一段落した時点で支払うのが成功報酬になる。
この成功報酬は、最初から罪を認めている量刑裁判では40万円程度、容疑を否認している困難事件だと50万円程度が相場だ。ただここで問題になるのは、「事件における成功とは何か?」ということである。