私の経験上、コミュニケーションの上手な人は5つを全部やっているわけではありません。しかし、その場、その場で必要な「きく」を意識せずとも自然とできている人が多いのです。それは、これまで述べたような「きく技術」を持っているからではなく、きく技術を使いこなす「マインド」を持っているからだと私は考えます。
そのマインドとは、「きく」ことは「認める」ことと、「気づかせる」ことだとわかっているということです。では、「認める」とはどういうことでしょうか?
「認」という字は「言う」を「忍ぶ」と書きます。要するに、「言うことを我慢する」こと、つまり「黙っている」ということです。
産業医面談を通じて感じているのですが、優秀なリーダーほど、部下が何か相談をしにきたときに黙ってきくことができません。
部下が「ちょっといいですか?」と相談してきたときに、上司は経験豊富ですから部下の話の最初の部分をちょっときいただけでもうわかってしまい、「そういうときは、こうして、ああして」とアドバイスをしてしまうことが多いのではないでしょうか。しかし、部下はアドバイスがほしくて話しにきたとは限りません。
こうしたとき、多くの部下はアドバイスがほしいわけではなく、話を聞いてほしい、状況をわかってほしいから、ただ話を聞いてほしいということがよくあります。
人間には耳が2つ、口は1つあります。これは話す2倍は聞きましょうということです。たくさん聞いてもらうことにより相談をしにきた相手は、自分のことを認めてもらったと感じます。言うを忍べば、相手は認められたと思うのです。そうです、「きく技術」を持つ上司とは、部下のいうことを黙ってきくことができるのです。