大手銀行などが、収益の柱と捉えていた個人向け無担保融資の規制強化に乗り出した。'16年の個人の自己破産申立件数は13年ぶりに増えたこともあった。果たして実効性は?
メガバンクが、「個人向けカードローン」の自主規制強化に乗り出した。
銀行が無担保で個人に融資するカードローンは、’10年の貸金業法改正で、年収の3分の1を超える融資を禁止する「総量規制」が導入されたが、銀行は対象から外されていた。
その結果、銀行の貸付残高は6年連続で増え続け、’16年末には5兆5000億円に達した。今回の自主規制で、過剰融資による多重債務者や自己破産は減るのか? 聖学院大学政治経済学部の柴田武男教授は、懸念を隠さない。
「銀行を批判するだけでは事態は解決しない。背景には、マイナス金利で住宅ローンや企業貸付といったコアビジネスが儲からなくなり、高金利の個人向けカードローンで収益を上げたい……という銀行の経営環境がある。過剰融資は問題外だが、銀行にも被害者の側面があるのです。特に、地銀は深刻で、地域の固定客をカードローンで食い潰せば、地方経済は回らなくなってしまう。タコが自分の足を食べるようなものですが、そうせざるを得ないほど追い込まれている」
一方、利用者側にすれば、規制強化は、目先の現金の供給源を奪われることになる。
最近、フリマアプリに「現金」が出品された騒動がいい例だろう。
「若者の貧困化が進み、頼りにしたカードローンが規制されれば、ネットオークション。それが禁止されればSuicaなどの出品と、かえって高コストの借金に手を出してしまう……。国にもセーフティネット貸付という制度があるが、家計管理を条件に融資をしてくれる制度が生協や信金、信組にあるので、利用して生活改善を試みてほしい」
<取材・文/HBO取材班>