経験者が語る“下請けいじめ”の実態。不当な減額、買い叩き、タダでやり直し要求は当たり前

橋本愛喜

筆者が働いていた弱小町工場の社長(当時)は、業者からの不当な要求に毎月頭を悩ませていた

 過去数回に渡り、筆者の父が経営していた工場を通じて世の町工場が抱える問題をいくつか取り上げてきたが、今回は企業間で生じる代表的な問題の1つ、「下請けいじめ」について綴っていこうと思う。

 筆者が父の工場で働き始めたのは、大学の卒業式を待たずしての頃だった。

 学校から家に帰るよりも近かったため、小学生の頃から工場に通い、職人の働く姿を間近で見てきたが、「見る」と「働く」とでは、もちろん次元が全く違う。

 社会経験もほとんどないまま飛び込んでしまったゆえ、正直、“何が分からないのか”が分からず、職人、取引先、営業、両親の間で、とっかえひっかえ問題を抱えてはフルスロットルで空回りする生活を続けていた。にもかかわらず、「若いから」、「性別をハンディにしたくないから」という意気込みだけは無駄に強く、今考えても当時は今以上に余裕も可愛げもなかった。

 そんな中、父の工場には年に数通、「親事業者との取引に関する調査について」という書類が中小企業庁からやってきていた。見ると「下請け企業を守るため」なる内容のことが書いてある。

 しかし、毎日空回っていた入社当初の筆者にとって、こういった国からの書類や手紙の対応などは、正直なところ煩わしい雑務。期限内に提出せよという文言に、「おい、国まで私の仕事を増やすのか」と、机の“未処理箱”に放り込んでは、期限ぎりぎりになって当たり障りのない回答をして返送していた。

 が、徐々に自分の立場と工場の状況が把握できるようになってくると、ようやくこの書類が少なくとも自分に味方するものであること、そしてその内容と現状の一致から、自分の工場が「下請けいじめ」を受けている只中にあることに気が付く。

 その書類の回答用紙や質問冊子に添えられた送り状には、世話になっていた親事業者(元請け企業)の名前が1通につき1社、ダイレクトに書かれてあり、冊子にはその企業に対する質問が50問ほど羅列してあった。

 一瞬、「この会社、なんか悪いことして国に目をつけられたのか」と思ったが、送り状をよく読むとそうではないようで、この書類は、親事業者が中小企業庁に提出した「下請事業者名簿」を基に無作為に選ばれ送られてくるもの、そして、その親事業者に下請法上の問題が認められたか否かにかかわらず調査が実施されることを知った。

 回答期限を設けてはいるものの、下請け側には提出義務は存在しない。質問内容のほとんどが金銭や納期に関わることで、発注内容を書面に残しているか、期日通りに支払いされているかなど、どれも元請けが下請けに不当な扱いをしていないかを細かく問うものだった。

次のページ 
「専用請求書」を1500円で買わされていた

1
2
3
4
5
関連記事
6
7