アルゼンチンはチャベスの反米主義に共鳴したネストール・キルチネールとクリスチーナ・フェルナンデスの夫婦による12年の政権で、米国のアルゼンチンにおける影響力は完全に後退していた。フェルナンデスは8年の政権就任中に米国には一度も足を踏み入れなかったほどである。その一方で、中国とロシアへの訪問は頻繁に行っていた。
しかし、この夫婦による政権でアルゼンチンは極度の景気低迷、インフレの高騰そして外貨不足という事態になり、同国の経済発展は完全に後退した。この政治に反対の烽火を上げて貿易開放と欧米との関係回復を唱えた政策を掲げて大統領選挙に立候補したのがマウリシオ・マクリであった。
米国にとって、アルゼンチンは地政学的にも重要なポジションを占めている。しかも、歴史的にもアルゼンチンは米国と深い繋がりがあった。それを唯一拒んだのがキルチネールとフェルナンデスの政権であった。
米国はマクリを支持する方向に動き、彼が政権に就いた時に重要な問題となる外国からの資金調達を容易にさせる為に、米国のハゲタカファンドへの債務返済金46億5000万ドル(5200億円)の問題を解決させる必要があった。フェルナンデス大統領はこの返済をする意向は全くなかったことから外貨の獲得に困難していた。
そこで、米国政府はマクリが大統領に就任して早速返済できるように協力したのであった。これによってアルゼンチンは外貨の獲得の道が開けたのである。
オバマ大統領がアルゼンチンを大統領として19年振りに訪問。その時にアルゼンチンはマクリが選挙戦中から提唱していた「ベルグラノ計画」の一貫としてブラジル、パラグアイ、アルゼンチンの3か国が国境を接する地域での表向きテロ活動や麻薬ルートの取り締まりといった目的で米軍基地を設けることに合意したのである。この地域はリチウムの塩湖と豊富な淡水へのアクセスが用意な地域である。
更に、南半球の最先端の都市ウシュアイアにも米軍基地を設けることになっている。そこは凍結した淡水が豊富で、太平洋と大西洋の接点。しかも南極に繋がる科学調査研究が可能なところでありるとされており、地政学的に重要な場所である。