なお、100人での襲撃があった場所は以前にも学生43人失踪事件の起きたゲレロ州。市長が首謀者で、警官と麻薬カルテルが実行役だったというむちゃくちゃな事件で、学生たちは焼かれ、棄てられたとされる場所です。
このように、市長までも凶悪犯罪に加わりうることがあるというのが、メキシコの怖いところです。
ジャーナリストへの殺害に関しても同様で、一番危険とされる麻薬カルテルだけから身の安全を確保すればいいというわけではありません。イグアラ市の例からも分かるように、そもそも麻薬カルテルと高官がつながっているケースもあるわけです。
バルデス氏のジャーナリスト仲間であるブリーチ氏は、麻薬犯罪と汚職のつながりについて追っていました。
この事件の背後に誰がいるかはまだ捜査中ですが、汚職の追及をされている高官が背後におり、ジャーナリストを「黙らせた」可能性も指摘されています。
つまり、麻薬カルテルの背後に黒幕がいる可能性も十分考えられるわけです。
イラクよりもジャーナリストの犠牲者が多い国、メキシコ
メキシコはジャーナリストにとっては危険地帯。これは共通認識となってきています。
国境なき記者団は昨年、メキシコが世界で3番目にジャーナリストの犠牲者が多い国と発表。1番目に多い国はシリア、2番目がアフガニスタン、3番目がメキシコで、4番目がイラク、5番目がイエメンです。
IS関連のニュースで頻繁に耳にする中東の国々が上位入りする中、メキシコが3番目に入っているのです。
政府がこれまで以上に強固な政策をとらない限り、今年度も引き続き、メキシコがジャーナリストにとって危険地帯であるのは間違いありません。
<文/岡本泰輔>
【岡本泰輔】
マルチリンガル国際評論家、
Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。