メキシコのジャーナリスト殺害件数は中東と同レベル。取材活動は死と直結

岡本泰輔
 5月16日、メキシコのシナロア州の路上で、ジャーナリストのハビエル・バルデス氏が殺害されました。

 バルデス氏はジャーナリストとして受賞経験もある人物。長年にわたり麻薬取引や組織犯罪などを追い、著書も多数あります。氏が殺害されたシナロア州はメキシコ最大の麻薬カルテル「シナロア・カルテル」の本拠地となります。

ジャーナリストであることは、ブラックリストに載るようなもの

 バルデス氏は麻薬犯罪を長年追ってきた人物だけあり、当然のことながら、自らの命が常に危険と隣り合わせであると認識していました。

 ザ・アトランティックによれば、バルデス氏は昨年「ジャーナリストであることは、ブラックリストに載るようなもの」と著書で述べたとしています。

 なお今年は、バルデス氏の警戒心はさらに強まっていたと考えられます。これには、約2か月前の事件が関係しています。今年3月、ジャーナリストのミロスラバ・ブリーチ氏が殺害されていますが、ブリーチ氏とバルデス氏には2つの接点があります。

 2つの接点とは何か。

 1つ目が、ブリーチ氏もバルデス氏同様、有名紙のラ・ホルナーダ紙に寄稿していたという事実。つまり、両者は同僚のようなものです。

 2つ目が、両者とも、メキシコでの「犯罪」を主なテーマにし、報道していたという点です(特に麻薬犯罪の点については重なる点もあります)。

 ちなみに先のブリーチ氏の殺害状況は凄惨でした。自宅前の自家用車内、しかも子供の目の前で、8発もの銃で撃たれたと当時のBBCは報じています。

バルデス氏殺害と同時期に、100人の集団による襲撃事件がある

 メキシコでは、バルデス氏殺害と同時期に、麻薬カルテル絡みと考えられている別の事件が起きています。

 13日、麻薬犯罪の取材をしていた記者など7人が、100人の集団から襲撃されました。幸いなことに命に別状はありませんでしたが、犯行グループは、

「生きたまま燃やす」

 など脅し、所持品を奪っていったとされています。記者団にとっては恐怖の警告といえるでしょう。

 襲撃された記者7名のうち、2名は上記でも書いたラ・ホルナーダ紙の記者とされています。ラ・ホルナーダ紙は有名な全国紙ですが、被害者が増えていることから、危機感を感じているジャーナリストは数多くいるでしょう。

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誰が犯罪の糸を引いているのかはわからない

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