“優秀すぎる”日本の宅配便再配達。アメリカでは不在時の荷物は雑草で隠す

橋本愛喜

ニューヨークの筆者の元自宅玄関前。放置された荷物と、鳴らないドアベル

 過去数回にわたって、日本の物流の現状について語ってきたが、今回は現在筆者が住んでいる米国ニューヨークの配達事情と比べながら、いかに日本の配達サービスの質が高いかを綴ってみたいと思う。

 今年に入ってからというもの、日本国内の運送業界が注目を集め続けている。その発端は、去年の暮に某大手運送企業の配達員が、荷物を地面に叩きつけたり蹴とばしたりしている動画が拡散したことにある。

 自分の所有物でもないものを叩きつけるというのは、運ぶことを生業としているプロとしての意識云々以前の問題で、あの後ろ姿は、荷物の受取人にだけでなく世間に対するある種の挑戦状だったともいえるだろう。たとえあの箱が空だったとしても、あの箱に「蹴とばし可」と書いてあったとしても、人として決して許される行為ではない。

 ただ、これを世間が一方的に「けしからん」と非難して終われるほど、彼ら運送業界が抱えている問題は浅くない。特に第一線で働く彼ら配達員は、ここ数年で大きな労働環境の変化に直面してきているのだ。

1日150個を届ける

 国土交通省が発表した「平成27年度の宅配便取扱実績」によると、同年の宅配便取扱個数は37億4493万個。

 そのうちトラック運送はその約98.9%にあたる37億447万個で、日本の経済はトラックによる物流が支えていると言って間違いないだろう。そんなトラックの配達員1人が担当する荷物の個数は、時期や時間帯にもよるが、多い時では1日で150個を超える。さらに日本には中元や歳暮など、他の国にはない「贈り物」に対する行事が多く、年の間に幾度となくピークがやってくるのだ。

 これだけでもトラックでの配達業務は激務であるといえるのだが、加えて現在の日本には、再配達や時間指定などのサービスが当然のように提供されている。時にそれらは、「無料配送」という文言のもとで行われるにもかかわらず、受取人からは数分遅れるだけで「何のための時間指定だ」というクレームが浴びせられるのである。

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道交法改正で配達員への負担はさらに増加

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