アボカドの生産では、メキシコが世界で断突の生産量を誇っている。その生産量は米国、ドミニカ共和国、コロンビア、ブラジル、ペルーそしてチリの生産量を合わせたものに匹敵するほどである。そのメキシコで生産されたアボカドの8割が米国に輸出されている。それは<年間で20億ドル(2200億円)のビジネス>である。(参照:「
Sin Embargo」)
最近は中国や日本などの需要も伸びており、またヨーロッパ市場もここ数年<30%需要が増加>しているという。
こうしたメキシコの供給能力も手伝って、米国でのアボカドの一人当たりの消費は<2006年の15キログラムから現在では30キログラム>に増加している。それは米国の<6割の家庭でアボカドが消費されている>ことになるとしている。(参照:「
Sin Embargo」、「
El Pais」)
しかし、そこに来てトランプ大統領が誕生した。トランプ大統領にとって、メキシコとの自由貿易協定(NAFTA)の見直しをするといった以上、メキシコ産アボカドへの依存度を減少させたい。とすれば、ここでアボカドの供給不足を補う為の供給国としてコロンビアとの関係を良好にすれば、今後のメキシコとの交渉において都合が良いというわけだ。その意味もあって、今回トランプ大統領がサントス大統領にコロンビア産アボカドの米国への輸出に協力するという姿勢を示したようである。
更に、米国は国内での供給不足を補うためにペルーからの輸入にも関心を示しているという。メキシコがアボカドの最大供給国になる前は、米国は主にチリから輸入していた。
米国で生産されているアボカドなどへの害虫の感染を恐れて1914年から1997年まで米国はメキシコ産アボカドの輸入を禁止していた。そして、輸入を解禁した時も60社の生産業者と5社の出荷業者を認定しただけであった。
解禁から20年経過した今、メキシコ産アボカドは米国市場ではなくてはならない果物として不動の地位を築き挙げている。しかし、メキシコ嫌いのトランプ大統領の後押しもあって、米国市場でコロンビア産アボカドがメキシコ産アボカドの市場に食い込むのではないかという恐れがメキシコのアボカド生産業者の間で生じているというわけである。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。