北朝鮮、新型ミサイル「火星12」型を発射――その正体と実力を読み解く

今年3月に燃焼試験した新型エンジンを搭載か

エンジン部分にはぼかしが入っているが、中央に大きなメイン・エンジンがあり、その周囲に4基のヴァーニア・エンジンがあることが見て取れる Image Credit: KCTV

 以前、本サイトでもお伝えしたように、北朝鮮は昨年4月と9月、そして今年3月と、それぞれ異なる新型ロケット・エンジンの燃焼試験を行っている。(参照:HBO『脅威増す北朝鮮のロケット技術――「新型ロケット・エンジン」の実力を読み解く』)  この新型エンジンのうち、今年3月に試験されたものは、メインのエンジン1基にヴァーニアが4基であり、火星12が装備しているものと形が合致する。  このエンジンは、その形状から、かつてソ連で開発された「RD-250」というエンジンをもとにしたものと考えられ、メイン・エンジン部分のみは昨年9月にも試験されている。その推力は40トン、ヴァーニアと合わせれば50トンほどと推測されるため、20トンを超えると考えられる火星12を飛ばすのには十分であろう。

今年の3月18日に試験がおこなわれた「新型の大出力ロケット・エンジン」 Image Credit: KCTV

 また、発射時の写真を見ると、メイン・エンジンやヴァーニア・エンジンが出す噴射ガスとは別に、形の異なるガスが、横にはみ出すようにして出ているのがわかる。  R-27やムスダンが装備しているエンジンは、その仕組み上、エンジンからの噴射以外に排出するガスがないため、このようなガスが見えることはない(ヴァーニアを動かすためのガスは出るが、これほど量は多くない)。  一方、昨年9月と今年3月に試験されたエンジンが採用している仕組みは、ムスダンのエンジンとは異なり、タンクからエンジンに推進剤を送り込むためのポンプを動かす際に使ったガスを外に排出することから、この写真のように、噴射ガス以外に別のガスが出ているように見える。  この点からも、火星12はムスダンとは異なるエンジンを積んでいる可能性が高いと考えられる。
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