コンビニが撤退しシャッター通りとなっていた団地のメインエントランス。(2016年8月、午後7時ごろ撮影)。 街灯やクリーニング店の明かりはあるが、深夜に一人で出歩くには勇気がいるほどだった
「団地特化型コンビニ」の1号店として東京のベッドタウン・東村山市に店を構えたセブンイレブンだが、それ以前の団地はどういった問題を抱えていたのだろうか。
団地特化型コンビニが出店した東村山市美住町のUR団地「グリーンタウン美住一番街」(総戸数945戸)は、老朽化した公団住宅を改築し1994年に供給を開始。改築当初は子育て世代にも人気があり、団地の入口に軒を連ねたコンビニや八百屋、薬局などが住民の生活を支えていた。
かつて団地内に出店していたコンビニ「スリーエイト」。(2012年4月撮影)。 セブンイレブンはこのコンビニ跡に居抜きで出店することになった。
しかし、一度は息を吹き返したこの団地も、近年は再び住民の減少と高齢化が進行しており、2000年代に入ると八百屋や薬局などが相次いで閉店。住民の一人は「昔は夜でも若い人の声が聞こえた。今じゃ昼間でも遊んでいる子供をそんなに見かけない」と話すなど、団地の賑わい低下は日を追うごとに顕在化していった。
そして、3年ほど前には最後の物販店となっていたコンビニ「スリーエイト」も閉店。団地内での日常的な買い物の場が失われるとともに、夜遅くまで営業していたコンビニの明かりが消えたことで団地の入口は不気味に静まり返り、夜間には一人で出歩くことも躊躇うほどになっていた。
そんな状況の中、コンビニ跡地に居抜きで出店したセブンイレブンは、前身店でも成し得なかった24時間営業を実現。簡単な買い物であればスーパーにまで出向く必要性もなくなったばかりか、大手企業の見慣れた看板と昼夜問わず消えない明かりは地域住民に大きな安心感を与える「防犯灯」としての役割も担うこととなった。また、住民からの要望を受けて店先にはベンチが設置されており、昼間にはお年寄りが集うコミュニティスペースにもなっている。
開店後の反響について、店舗関係者の一人は「『もうコンビニ閉店しないよね?』と聞いてくる方もおられますが、大丈夫です。閉店しませんので(笑)」と力強く回答。
団地のエントランスに灯るコンビニの「明かり」は、末永く住民の暮らしを明るく照らし続けることになるであろう。