犯罪的麻薬流通が深刻なメキシコで、大麻の医療目的使用がついに合法化

メキシコが選んだ「道」

 子どもを抱える親たちの代弁者とでも言った感じで、メキシコの3大政党のひとつで大麻の合法化に一番積極的だった民主革命党のヘスス・サンブラノ副党首は<「これまでは、子供が病気と共存して生活ができるために、親たちはこの治療を子供に受けさせようとして法を犯してまで行動して来たことが、今後は必要でなくなり、安全にこの治療を子供が受けることが出来るようになった>と評価した。(参照:「Excelsior」)  医療目的という面について、ロシオ・マテサンス・サンタマリア議員は<大麻は40の異なった病気や苦痛の治療を補う効果がある>と指摘した。その一部を次に挙げた。<片頭痛や腫瘍の中でも肺、乳房、脳腫瘍の進行を遅らせる効果がある>。<てんかんの発生を防ぎ、そしてコントロールする役目もする>。<めまい、腹痛、下痢と言った慢性的な病気の症状を和らげる>。<アルツハイマーを予防する>といった効果だ。(参照:「Excelsior」)  一方、麻薬の消費について警察の調査によると、メキシコではメキシコ市だけで見ると<8万5000人が麻薬常習者で、その85%が大麻、7%がアンフェタミン、4%がコカイン>をそれぞれ常習しているそうだ。同市の<若者の大麻の消費は4%から6.6%に増加>しているという。1週間に麻薬に費やす費用は<平均して21.53ドル(2400円)>だという。(参照:「Sin Embargo」)  麻薬の排除への取り組みは容易ではない。しかし、医療における大麻の合法化によってラテンアメリカではウルグアイに続いて麻薬への取り組みを表に出して社会にそれを訴えて、その理解を求める方法をメキシコは選んだのである。  米国も既に29の州で医療大麻が合法化されている。ラテンアメリカでは今後も麻薬との戦いは続くが、医療面から社会の理解を求める方向に向かう国は増えて行くように思える。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会