本当は誰も損していない北朝鮮ミサイル狂騒曲 当事国、関係国それぞれが得たものとは

 4月、日本は北朝鮮のミサイル狂騒曲に踊った。

 アメリカのトランプ大統領が「ミサイルを撃てば攻撃をする」と息巻けば、北朝鮮は「先制攻撃を行えば、アメリカ本土にミサイルを落とす」などの威嚇のチキンレースが展開され、米朝で開戦されれば(正確には休戦協定が破棄されれば)戦禍に巻き込まれる可能性のある日本は、メディアを通じその緊迫した状況をリアルタイムで伝えた。

 結論から言えば、アメリカは北朝鮮を爆撃することなく、北朝鮮もアメリカや日本に向けたミサイルを発射してはいない。北朝鮮がミサイル実験を行ったとの報道がなされてはいるが、「失敗」との評価だからなのか、それ自体で米朝間の緊張が一層高まることも無かった。また4月30日で、米韓合同軍事演習フォールイーグルも終了したことから、米朝間の緊張は劇的に沈静化されるであろう。

 今回の米朝間の軍事的緊張とは一体何だったのか。今回の一連の騒動は、アメリカ、中国、韓国、日本、北朝鮮にそれぞれどのような影響をもたらしたのか。結果論として簡潔にまとめてみた。

アメリカが得たものは軍事マネー

 今回のミサイル狂騒曲の当事者であるアメリカと北朝鮮の「結果」について考えてみる。

 まず、アメリカが得たもの、それは莫大な軍事マネーである。

 トランプ大統領の就任前後から軍事関連株は好調であったが、今回のシリア爆撃から、北朝鮮が絡む東アジア危機に至る期間、例えば売上高の80%は軍事関連が占める、ロッキード・マーチン社や、航空機製造の最大手ノースロップ・グラマン社の株価は急騰している。

 更には、標的を大気圏外から狙う弾道ミサイルを大気圏に再突入するタイミングで破壊できるTHADD(高高度防衛ミサイル)を韓国に配置したことにも注目だ。トランプ大統領は、このTHADD配備の費用10億ドルを韓国に求めた。(4月30日、マクマスター米大統領補佐官が費用は米国が支払うと訂正)

 これは単に費用負担の問題ではない。文在寅(ムン・ジェイン)氏の当選が有力と言われている韓国の大統領選であるが、ハト派の文氏に軍事費の削減に舵を切らせないための牽制であったと推測出来る。また今回の北朝鮮危機により、日本の防衛省もTHADDの配備の検討をスピードアップさせた。これにより、また莫大な軍事マネーがアメリカに転がり込む。結果論で言えば、トランプ大統領のビジネスマンとしての商才が発揮されたと言える。

 一方、北朝鮮は何を得たのか。

 北朝鮮は今回の一連の騒動で、アメリカのレッドラインを確認することに成功した。アメリカが金正恩委員長の暴発を恐れるのと同様、北朝鮮にとってもトランプ大統領の暴発には未知数な部分があったはず。北朝鮮が求めているのは、核カードをちらつかせながら、アメリカを交渉のテーブルにつかすことである。

 さすがにそこまでの戦果を得ることは出来なかったが、このレベルであればアメリカの攻撃を受けることはないという、セーフティーな前例を作ることには成功した。

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