政府も霞ヶ関も知らなかった?大阪・手形急増のミステリー

「金融庁も経済産業省も問い合わせたら、気づいてもいなかった。これは超特大のニュースになってもおかしくない問題だよ」

 某信用調査会社の幹部にそう聞かされたのは3月のことだった。それから1か月以上経つが、実はいまだにその問題は解明されていない。それは、一部で手形の交換高が急増しているという問題だ。

経産省のHPでは手形の縮小を促すためか、「まだ手形で払ってるんですか?」という挑発的な文言が。このとぼけたキャラクターは、適正取引を推進するテキトリ(適取)君

 ご存じのとおり、手形は支払いの際に振り出される決済手段。受取人は期日を迎えた手形を金融機関に持ち込むと、額面どおりの現金を受け取ることができる。期日前の手形であっても、利息の一種である手形割引料を差し引かれた金額を受け取ることが可能だ。

 製造業ともなれば、下請企業に部品を発注し、納品してもらい、それをもとに商品をつくりあげて売り上げを立てるまでに、何か月も要する。手形は支払いを先延ばしにして時間を稼ぐために発達した企業間金融の仕組みといえる。

 しかし、手形は下請企業の経営をひっ迫させる決済手段でもある。公正取引委員会と中小企業庁が定めた「下請代金の支払手形のサイト短縮について」という運用ルールによれば、事業者は最大120日サイトの手形を振り出すことが可能。最大で4か月経たねば額面どおりの金額を受け取れない手形を振り出すこともできるのだ。

 一方で、製造業等の現場では月末締めの翌月払いが一般的。仮に5月の頭に納品したとしても、支払いは6月末。それも手形で支払われれば、10月まで待たねば満額を受け取れないわけだ。

 期日前の手形を金融機関に持ち込む場合にも、下請企業は大きな負担を強いられる。「手形は振出人(大手企業など)の信用力でなく、持ち込んだ人物の信用力に応じて割引率が決まる」(金融関係者)からだ。その割引率は「中小企業ならば2~3%以上になることもザラ」(同)だという。1000万円の手形ならば、20~30万円も割り引かれる。それも、持ち込んだ人(下請企業など)の負担だ。

 このほかにも、振り出し人には手形印紙税が課され、手形台帳の保管等にも人件費がかかる。このように現金決済と異なり、副次的なコストが多く発生するため、1990年を境に手形の振り出しは一貫して減っていった。手形交換高(振り出された手形を金融機関が持ち寄り、集中決済する手形交換所での取扱高)はピークの1990年が4797兆2906億円。これが、2015年には299兆322億円と、10分の1以下にまで減少している。

 ところが、2016年には424兆2244兆円に急増。その増加額は、日本の一般会計予算を優に上回る。これが、信用調査会社幹部が「超特大のニュースになってもおかしくない」とする問題なのだ。

 というのも2016年末、安倍政権は約50年ぶりに下請代金支払遅延等防止法の見直しに踏み切った。下請企業が不利益を被らないよう「現金払い」を原則とし、「将来的に手形サイトを最大120日から60日に短縮する」とした通達を出したのだ。国を挙げて、弊害の多い手形の縮小に取り組むとした直後に判明した、思わぬ手形の急増……。

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原因は大阪?

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