歴史に名を刻んだ日本最大のホビー店「アソビットシティ」閉店! 爆買いバブルに踊らされたラオックス、次の一手は?

「爆買い偏重」で赤字転落のラオックス、今後は「コト消費」重視に転換?

 観光庁の調査によると2016年の訪日外国人客は2403万人と過去最高になったものの、1人あたりの平均消費額は15万5896円と、前年比約11パーセントのマイナスとなった。その大きな要因が、2016年4月に行われた中国政府の関税税強化策の影響や、中国国内におけるEC市場(ネット通販)の充実、訪日客の客層の変化やリピーターの増加などだ。  こうした「爆買い」の鈍化にともないラオックスの業績も悪化、2016年12月期の連結売上高は前期比32パーセント減の627億円、最終損益は15億円の赤字となり、2014年上半期から1年半余りで約14倍にも高騰した株価も、今春には2014年上半期の水準に逆戻り。ここ数か月は急速な店舗整理をおこなっており、2016年度後半にはアソビットシティ以外にも札幌ノベルサ店、イオンモール成田店などを閉店、とくに釧路空港店、旭川店は1年以内での撤退となってしまった。くしくも秋葉原アソビットシティの閉店は、「爆買いバブル」に踊らされた時代を象徴する出来事となってしまったのだ。  しかし、ラオックスは免税店事業の拡大をあきらめた訳ではなく、2016年11月には成田空港に、12月には福岡ヒルトンホテルに、そして今年4月27日には新宿髙島屋タイムズスクエア11階に開設される免税店「SHILLA&ANA」内に新規出店。地方の店舗や免税店以外の業態を整理しつつも、訪日客が多い大都市や国際空港での足場固めを進めると思われる。

4月27日にラオックスが出店した新宿髙島屋

 一方で、新たな試みも始まっている。ラオックスは、4月20日に子会社「フードクリエイションワークス」を設立して飲食業に参入することを発表。従来型の「モノ消費」に加えて、比較的景気に左右されづらい「食」を含めた「コト消費」を強化することで、経営の立て直しを図りたい考えだという。  中国企業による買収劇から約8年。ラオックスは「中国企業ならではの身のこなしの早さ」により再びV字回復することができるのであろうか。新たな事業の行方も含めて今後の展開が注目される。

ラオックスグループが千葉ポートスクエアに開設する飲食店。同社プレスリリースより

<取材・文・撮影/都市商業研究所都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」 ※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中 ・GAP渋谷店、5月7日閉店-GAP日本旗艦店の1つイーアス高尾、6月22日開業-八王子最大級のショッピングセンターにニトリ渋谷店、2017年6月ごろ開店-丸井・シダックス跡に「都心初」単独旗艦店
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