トランプ大統領誕生後、キューバと米国の関係進展が停滞。軍部は中ロの接近を危惧

虎視眈々と狙うロシアと中国

 米国のライバルとして、キューバに関心を示しているのがロシアである。ロシアにとって関心があるのはキューバに再度軍事基地を設けることである。ロシアはキューバを始め、ベトナム、シンガポールなどに軍事基地を設けたいとしている。キューバに以前あった基地はレーダーによる傍受基地であったが、ソ連の崩壊に伴い、ロシアは2002年にそれを撤去させた。  米国との国交が復活した現在、キューバ政府がロシアの軍事基地の建設を許すとは思えない。しかし、今後のトランプ政権の対キューバ外交に新たな展開が見らなくなると、キューバはロシアを頼るようになる可能性は十分にある。そうなると、ロシアがキューバと軍事面で強化を図ろうとする可能性が生まれるかもしれない。その前触れとも思わせるように、2014年にロシア連邦安全保障会議とキューバ国家安全防衛委員会との間での協力が合意された。  中国はつい最近までキューバに対しては他のラテンアメリカ諸国と比較して、中国からの投資は相対的に少なかった。しかし、ラテンアメリカのブラジルとアルゼンチンが中国とロシア寄りから欧米寄りに外交を展開して来ており、中国もラテンアメリカにおける戦略の見直しが迫られている。その一貫として、キューバとの取引進展も一つのテーマとなっている。昨年、安倍首相がキューバを訪問した後、直ぐに李首相もキューバを訪問している。そして、中国はインフラ開発や医療分野での協力を約束している。中国の場合、まだ軍事面での関係強化はこれから始まるところである。  トランプ大統領の対キューバ政治外交が今後どのように展開されるか不明であるが、米国の企業関係者は、国交が復活して以来、それでも前進を続けている。米国の300万社を会員に持つ商工会議所会頭のトーマス・J.・ドナヒューは2月にキューバを訪問し、ラウル・カストロ評議会議長と会談している。  同様に、ミシシッピー州のヒル・ブライアント知事も観光、農業、食料の輸出をテーマに2月にキューバを訪問。コロラド州の州知事やウイリアム・タッド・コクラン上院議員らも同国を訪問している。  キューバの命運を握るのは、果たして度の国になるのか? <文/白石和幸 photo by flunkey0 via Pixabay(CC0 Public Domain)> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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