地方衰退で若者に活躍の余地? 格差是正には「増税も必要」と渡辺監督
渡辺智史監督
現在、政府も「地方創生」を掲げ、都市から地方への移住を後押ししている。ところが、そこで必ずネックとなるのが地方の閉鎖性だ。
若者の新しい取り組みを地域の有力者が排除したり、
空き家や耕作放棄地を移住者が苦労の末に使えるよう整えた段階で、持ち主が返すよう求めたりといったケースが、ネットでしばしば話題になる。
「地方が衰退していく中、今ではある程度個人を受け入れ、その地域で各自が自分のやりたいことをしたり事業を起こしたり、活躍できる余地が生まれてきた」と渡辺監督は言う。過疎化が限界集落と呼ばれる状態まで行き着くと、地域にも「今のままではいけない」と危機感が生じ、若者や新しい取り組みに対して寛容になる、というのだ。
さらに、今までは電気代や暖房費といった形で費用が地域の外に流出していたものが、自然エネルギーの利活用によって抑えられる。そうして地域にお金が残り、地域の中で消費されることで、より大きな経済効果(地域内乗数効果)が生まれるとの指摘もある。
つまりこれが、渡辺監督が地域に見いだす「新しい希望」だ。「ローカライゼーションを通じて地域経済が健全になれば、縮小社会で経済が不安定になっても耐えられるのではないか」と語る。
だが地方の衰退は「待ったなし」の状態だ。その中で、経済的弱者はすでにセーフティネットからこぼれ始めている。官民挙げて自然エネルギーの導入に積極的な神奈川県小田原市で「生活保護なめんな」ジャンパー事件が発覚したのは象徴的だ。
「国と地方を合わせた借金が1000兆円以上と言われる今、行政に頼って生きていくことが限界を迎えているように感じる。福祉の充実には増税しかないが、今後は地域の資源を使って高齢者や経済的弱者をケアするような事業も必要では」(渡辺監督)
日本は急激な縮小社会へのハードランディングを避けられないのか。避けるにはどうすればいいのか? 渡辺監督は新作『おだやかな革命』で、そのことを社会に問おうとしている。
<取材・文・撮影/斉藤円華>
映画『おだやかな革命』
現在、今秋の都内公開に向けてクラウドファンディングを実施中。公開後、全国のミニシアターでの上映、および各地での自主上映を目指している。